「レヴォーグ派生」の新たなSUVが作られた意味 「極めてしなやか」に走るレイバックの価値

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走りのチューニングを施した担当エンジニアによれば、レヴォーグと比べて、前後スプリングのバネレートを下げ、ショックアブソーバーのピストンバルブを、微振動をうまく吸収するものに変更したという。

さらに、クロストレックでも採用したオールシーズンタイヤとの相性がとても良い。レヴォーグをベースに、都市型SUVとして進化させるサスペンションセッティングとしては、至極まっとうな内容だと言えるだろう。

そこにスバルがいう「動的質感」の研究開発で積み上げてきた知見が、うまくマッチしている。

都市型SUVセグメントの可能性を信じて

最後に、小林PGMに話を聞いた。

商品企画を検討し始めたのは、2020年に現行の2代目レヴォーグが発売された時期だという。国内市場で、SUVの需要が高まっていたころだ。

スバルとしては、フォレスターやアウトバックで、アウトドア志向やラギッドなイメージが先行する中、市場では都市型SUVを望む声があったそうだ。また、大まかな意味での都市型SUVの領域では、日系メーカー各社の売れ筋SUVがひしめいている状況でもあった。

取材に答えてくれたスバル商品企画部プロジェクトゼネラルマネージャー(PGM)の小林正明氏(筆者撮影)
取材に応えてくれたスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー(PGM)の小林正明氏(筆者撮影)

それでも市場分析をする中で、レヴォーグをベースとした都市型SUVセグメントの可能性を信じて、スバルとしてのレヴォーグ レイバックの開発が始まった、という流れである。

開発において最も気にしたのは、「レヴォーグの車高を上げただけのクルマだと思われるようなクルマづくりは、絶対にしないこと」だったという。だから、スバルが創出する新しいタイプのSUVとして、走りに徹底的にこだわった。

また、SUVとするため最低地上高を200mmとしたが、この数値はスバルがクルマづくりの中ではじき出した、「ひとつの指標」だという。

そして、200mmの最低地上高を実現するために、フロントのアプローチアングルやリアのデパーチャーアングルを考慮したボディスタイリングを練った。

バンパーやサイドスカートの形状から、アプローアングルやデパーチャーアングルが考慮されていることがわかる(筆者撮影)
バンパーやサイドスカートの形状から、アプローチアングルやデパーチャーアングルが考慮されていることがわかる(筆者撮影)

クルマ全体の開発では、初期の検討から具体的な開発の方向性が早めに決まり、机上検討と実際の走行を繰り返す中で狙いが定まっていったという。

 スバルが挑んだ、新しい「スバルらしさ」を表現する都市型SUVのレヴォーグ レイバックは、2023年9月7日から予約販売が始まる。

気になる価格のイメージだが、車格としては当然、レヴォーグとアウトバックの中間、かつ搭載エンジンから見て「レヴォーグSTI Sport EX」より低めなので、300万円台中盤前後が予想される。

アイサイトXとフル液晶メーター、12.3インチ大型ディスプレイ、さらにハーマンカードンサウンドシステムを標準装備するというから、スバルとしては競合車を意識したかなり戦略的な価格設定になりそうだ。

販売店周辺での短時間の試乗でも、レヴォーグ レイバックとスバルの他モデルとの、または他社SUVモデルとの「味わいの差」を十分に感じ取ることができると思う。ぜひ、この新しいスバル車を体験してみてほしい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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