ジャニーズとビッグモーター、渦中の企業の共通点 同族企業、資本関係…相違点はファンの有無?

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ジュリー氏は今年5月、ジャニー氏の性加害について「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」とコメントした。しかし報告書では、『週刊文春』による性加害疑惑の報道(1999年から)や、文春報道をめぐる訴訟(2004年判決確定)などを通して、ジュリー氏ら取締役には「適切な対応を取る義務があったと解される」と指摘。問題が世界的に注目をあびるきっかけとなった、イギリスBBCからの取材依頼についても、「先代の負の遺産」を清算できる立場にありながら、「適切な対応をとることはなかった」と断じている。

「同族経営」「資本関係」などの共通点

一方で報告書では、ジュリー氏とメリー氏の関係が悪化していたことも記されている。好意的に見るならば、「ジュリー氏は性加害問題について一切知らなかったわけではないだろうが、ジャニー、メリー両氏の存命中は介入しづらい立場だったのではないか」……と想像する人もいるかもしれない。

さて冒頭でも触れたが、今回の報告書を受けて「ビッグモーター」との共通点を指摘する声が相次いでいる。まずは「同族経営」である点だ。ビッグモーターは、創業者である兼重宏行前社長と、その子である兼重宏一前副社長が実権を握り、とくに宏一氏による強権的な経営が、不正の要因になったのではと指摘されている。

引責辞任した兼重親子と同様に、ジュリー氏についても辞任の意向が報じられている。しかし、ネットユーザーらの反応が好ましくないのは、両社に共通して「経営陣を交代しても、資本関係が変わらないと意味がない」との見方があるからだ。どちらも非上場企業で、筆頭株主であるオーナーが、絶大な支配力を持ってきた。

ビッグモーター
ビッグモーターは、当初、内部通報のもみ消しを図った(撮影:今井康一)

ジャニーズ事務所においては、ジャニー氏とメリー氏の存命時には、両氏が株式を50%ずつ保有していたが、世を去った現在はジュリー氏が100%を保有している。もし社長交代となったとしても、資本関係に変化がなかった場合、「雇われ社長」にどれだけの改革ができるのか、懐疑的に受け止める人は多いだろう。

そして、メディア編集に携わってきた筆者として、もっとも気になる共通点が「媒体社との距離感」だ。

ここで断っておきたいのが、「すべてのメディアが沈黙してきたわけではない」ということ。ビッグモーターの不正問題では社会的な話題になる前から複数のジャーナリストや専門メディアが声を上げてきていたし、ジャニーズの場合も一部の雑誌や暴露本が取り上げてきた。

次ページ「媒体との距離感」も似ているゆえに…
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