地銀再編で「負ののれん」が注目を集める理由 100億円単位の特別利益でも、素直には喜べず

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ふくおかFGが巨額の負ののれんを計上するのは初めてではない。2019年4月には長崎県の十八銀行がグループ入りしたことで、2020年3月期決算で1174億円もの負ののれんを特別利益に計上した。

同じ決算では、与信費用として前期の12倍にあたる614億円を引き当てた。当時はコロナ禍発生当初ではあったが、コロナ禍を直接の理由とした引き当ては約90億円にすぎない。大部分を占める約420億円は、将来の景気悪化に備えた予防的な引き当てだ。「十八銀との経営統合による負ののれんをうまく活用した」(地銀関係者)。福岡中央銀行との経営統合に際しても、負ののれんが「活用」される可能性がある。

買収企業の成長性に疑義?

降って湧いたボーナスに映る負ののれんだが、喜んでばかりはいられない。一般的に、のれんは買収した企業の超過収益力を表す。それがマイナスということは、買収企業の成長性に疑義が持たれることを意味するからだ。

地銀の経営環境の転換を象徴するのが、2007年にふくおかFGと経営統合を果たした熊本ファミリー銀行(現熊本銀行)と親和銀行(現十八親和銀行)だ。2行のグループ入りした当時、ふくおかFGは約1800億円もの「のれん」を計上していた。当時は買収額が純資産額を上回っていたのだ。

10年後の2017年、同社は未償却だったのれん948億円の一括償却を発表した。理由は経営統合時に想定していなかった低金利政策の影響だ。2007年に約1.7%だった10年物国債の利回りは、マイナス金利の導入によって2016年には一時マイナス圏に沈んだ。低金利環境を考慮して2行の資産価格を見直した結果、簿価の50%を下回り減損基準に抵触した。

国内金利には先高感こそあるが、貸出金利に影響する短期金利が上昇するのは当面先だ。八十二銀は長野銀との合併やシステム統合を予定し、横浜銀とふくおかFGは規模の違いを生かした地元企業の支援強化を強調する。「負ののれん目当てで統合した」と後ろ指を指されないためには、経費削減や相乗効果によってグループの利益を押し上げることが急務だ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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