海外ドラマでLGBTQ+はどう描かれてきたのか この30年でハリウッドは目まぐるしく変化した

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ティーンエイジャーを主人公にしたドラマはさらに顕著だ。いずれもNetflixのティーンドラマ「私の“初めて”日記」や「セックス・エデュケーション」「ユニーク・ライフ」や、ヘアメイク、ファッションが話題になったHBO Maxの「ユーフォリア/EUPHORIA」などでは、もはやセクシュアリティのラベリングは存在しない。登場人物の数だけセクシュアリティがあって当たり前。例えば、トランス女性が女性に恋をしたら、トランスジェンダーであって、レズビアンである。これをどう表現するのか? できないだろう。誰がトランスジェンダーで、誰がゲイなのかといったことにストーリーで触れない。話題にすることのほうが非日常なのだ。

ハリウッドでは「中の人」もLGBTQ+……?

ここまで、海外ドラマのなかでのLGBTQ+の描かれ方の変化を紹介してきた。それでは、それらの作品を生み出すクリエイターや、LGBTQ+を演じる役者の実態はどうなのか。答えはケースバイケースだ。LGBTQ+役を当事者が演じるケースも非常に多い一方で、俳優が自身のセクシュアリティと異なる役柄を演じることだって、もちろんある。そんななか、トランスジェンダーの俳優「トランスアクター」の権利を訴え、トランスジェンダー役は当事者が演じるべき、と行動に出たクリエイターがいる。「アメリカン・ホラー・ストーリー」などを世に送りだした鬼才ライアン・マーフィーだ。彼自身、ゲイであることを公言していて、手がける作品ではLGBTQ+の苦楽や日常を大きなテーマとして扱う。

FOXで放送され大ヒットした「glee/グリー」(2009年)では、父親との関係に悩むゲイのカートが登場。10代のゲイの高校生が抱えるであろうリアルな悩みを表現した。一方、生活していくなかで同性愛が芽生えたのが、ブリトニー&サンタナのカップルだ。はじめは異性の恋人がいたものの、次第に二人の想いが友情ではなく恋愛感情であることに気づき、唯一無二のカップルに。ナチュラルに描かれた過程に感動する場面も多い。これは、LGBTQ+の当事者であるライアン・マーフィーだからこそ表現できたものだろう。

そしてライアン・マーフィーは、2018年にLGBTQがメインキャストの「POSE/ポーズ」を制作。総勢50名以上のトランスジェンダーの俳優(トランスアクター)をキャスティングした。主役を演じたビリー・ポーターは、エミー賞で同性愛者をオープンにする俳優として初の主演男優賞を受賞。世界中のLGBTQ+に影響を与える俳優の一人となった。

【2023年9月11日16時00分追記】初出時の「ビリー・ポーター」のセクシュアリティの表記について一部文言を修正しました。

セレブが転落する様を描くコメディドラマ「シッツ・クリーク」(2015年)は、LGBTQ+からの支持が高いことで有名だ。その理由は、パンセクシャルの長男役を演じたダン・レヴィにある。彼は出演だけでなくクリエイターとしてもこの作品に参加していて(しかも父親のユージン・レヴィとともに)、実生活ではゲイである。作り手、そして演じ手双方の視点からLGBTQ+当事者としてアプローチした点が、そのコミュニティから理解を得られたポイントとして大きい。説得力があり、当事者が見たときに「自分事化」できるシーンが多いのだ。

また、前述した「モダン・ファミリー」のミッチェルを演じたジェシー・タイラー・ファーガソンも、「ブラザーズ&シスターズ」でスコッティ役を演じたルーク・マクファーレンや「アグリー・ベティ」でマーク役を演じたマイケル・ユーリーも、実生活でもゲイである。さらに「ユーフォリア/EUPHORIA」で主人公の恋人ジュールズ役を演じたモデルで俳優のハンター・シェイファーも、トランスアクターの一人。あまりにも繊細なジュールズの機微を美しくも儚く演じ、話題となった。

【2023年9月11日16時00分追記】初出時の「モダン・ファミリー」のキャメロン役のセクシュアリティの表記についての文言を削除しました。

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