海外ドラマでLGBTQ+はどう描かれてきたのか この30年でハリウッドは目まぐるしく変化した
例えば、トランスジェンダーであることをカミングアウトした70代の父親を描くAmazonプライム・ビデオの「トランスペアレント」(2014年)をはじめ、夫からゲイのカミングアウトを受けると同時に離婚を切り出された70代主婦を描くNetflixのコメディドラマ「グレイス&フランキー」(2015年)などの台頭だ。コメディだけではない。イギリス人俳優のベン・ウィショー主演のイギリスドラマ「ロンドン・スパイ」(2015年)は、男性同士の純愛を描いたラブロマンスで、心揺さぶられる演出が話題に。ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされている。
ドラマではないがグローバルヒットを飛ばすNetflixのリアリティショー「クィア・アイ」(2018年)の存在も忘れてはならない。“ファブ5”と呼ばれるメインキャラクターの5人は全員がノンバイナリー、ゲイ、フリュイド(流動的)だ。
notストレートguysが5人集まり、インテリア、ヘアメイク、ファッション、文化、ワイン&フードの視点から、コンプレックスを抱える依頼人に気づきを与えていく。彼ら自身もさまざまなバックグラウンドを経て今がある。ゆえに彼らの助言はどれも深く温かいものばかり。スクリーンを通して、私たち視聴者の心にまで染み入ってくる。「見た目を変える」などのその場限りの薄っぺらな変化ではなく、「そのままのあなたで十分に素敵だ」と内面を肯定し、考え方を変容させていくアプローチに評価が集まり、今やNetflixの人気コンテンツの一つになっている。
配信サービスを中心に脇役どころか、LGBTQ+なしではストーリーが成立しない、メインストリームに据える作品が多く登場したのだ。
セクシュアリティのグラデーションを表現
2020年代に入って、LGBTQ+の描かれ方はさらに進化したように思う。これまではどうしてもレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーにフォーカスされがちだったが、バイセクシャル、ノンバイナリー、クエッショニングなど、セクシュアリティにグラデーションがあることがドラマ内でも描かれるようになった。また、異性愛者にもグラデーションがあるということに切り込むものも少なくない。
例えば、2021年末にHBO Maxで配信がスタートした「セックス・アンド・ザ・シティ」のリブート版「And Just Like That…/セックス・アンド・ザ・シティ新章」では、異性愛者だったミランダがノンバイナリーのチェに恋をして周囲を驚かせるものの、彼女自身もレズビアンなのか、バイセクシャルなのか、自身のセクシュアリティに迷っているくだりはあまりにもリアルだった。人によって好きな色が異なるように、セクシュアリティも人の数だけバリエーションがある。異性愛者であったとしても「異性が好きだけれど、少しだけ同性も気になる」といったように、最近のドラマでは、性的指向のグラデーションが細かに描かれる。
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