公共放送BBCの研究 原麻里子、柴山哲也編著
BBC(英国放送協会)は、「フセイン・イラクに大量破壊兵器はない」との報道に先陣を切った結果、日本ではすっかり中道・左派と見なされ、しばしば世界最高峰のジャーナリズムとたたえられる。
本書によれば、これは一面にすぎない。もともとBBCは、王政・軍・国教会の頂点にある英国国王から、数少ない特許状をいただく存在であり、第2次世界大戦中にジョージ・オーウェル(『1984年』の作者)がインド課に在籍し、アジア向けに日本の侵略批判の放送を繰り返した「国威発揚・ナショナリズム養成の場」という伝統が現在も守られているという。
むしろ、特許状という仕組みが、報道活動にほぼ制限がなく、自由かつ広範な活動を展開できるメディアとしての役割を獲得させているようだ。巨大メディアに成長したBBCは近年、企業統治の近代化に踏み切った。手本としてきたNHKを考えるうえで、示唆に富む実用的な研究書だ。
ミネルヴァ書房 4725円
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