日本の国会 審議する立法府へ 大山礼子著~ 機能不全から脱する あるべき改革を論ずる
熟議の国会が求められて久しいが、国会で政策が議論されることも、審議過程で法案が修正されることもまれだ。野党は廃案に追い込むことに注力するばかりで、法案修正があっても交渉は国会外で行われ、国会審議の活性化につながっていない。政権交代で与野党が入れ替わっても事態が変わらなかったということは、政治家の資質や彼らを選ぶわれわれの能力か、国会の制度に原因があるのだろうか。本書は、あるべき国会改革を論じたものである。
日本では議院内閣制であるにもかかわらず、内閣は自らが提出した法案の修正権も、法案成立を促すための手段も持っていない。国会の議事日程策定にすら関与できない。これは、戦後、権力分散を重視する米国議会制度を日本に持ち込んだことの弊害である。それゆえ、国会の権力が強く、内閣の存在感が希薄となった。国会法の改正が急務であることを、マスコミはなぜもっと伝えないのか不思議だ。
過去20年、われわれが強い首相を求めて改革のお手本にしてきたのは、英国である。しかし、英国議会は、そもそも協議を通じ妥協点を見出す形式ではない。日本では、参議院など首相に対し拒否権を持つプレーヤーが制度的に多く、近年は連立が常態化し、英国流の議会制度はますます馴染まなくなっている。参考にすべきものとして、欧州大陸の議院内閣制が論じられている。国会法改正や会期制見直し、参議院改革など具体的提言がなされ、大変有用である。
国会の機能不全が続く中、東日本大震災という国難に対し、大連立への期待が高まっている。ただ、大連立は本来、民主主義と相いれない。あくまで緊急避難的な手段である。仮に大連立が選択されるならば、熟議の国会を可能とする制度改革も同時に行われるべきであろう。
おおやま・れいこ
駒澤大学法学部教授。1954年東京都生まれ。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。専攻は政治制度論。国立国会図書館勤務、聖学院大学助教授、同教授を経る。
岩波新書 840円 235ページ
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