「二酸化炭素25%削減」は取り下げるな、今こそ長期ビジョンを示せ
しかし、日本のこれからの10年は厳しい。富士通総研の試算では、大震災が発生しなかった場合と比較して20年時点の日本のCO2排出量は4・6%増加する。それでも「90年比25%削減」を達成するためには、国内削減のみの場合、削減費用は239・3ドル/トン・CO2(20年)となり、これがGDPを1・9%押し下げるという。つまり、従来の発想のままで温暖化対策を行えば、震災復興や経済回復への大きな阻害要因となるわけだ。
復興と両立できる削減策はないか。富士通総研の濱�博・主任研究員は温暖化対策を日本単独で行うのではなく、中国、韓国、インドの4カ国全体で削減目標を設けることを提唱する。これは、COP15で各国が提出した削減目標・緩和行動を合算し、各国がその共同目標達成へ努力するもの。
中国やインドでは日本の高効率の石炭火力技術を導入することなどで大幅な削減効果が見込まれ、日本以外の国での目標超過分で日本の不足分を補う(25%減を達成)というものだ。これにより、前出のGDPへの影響度は0・1%とプラス転化する。濱�氏は「温暖化対策の責任を損なわずに復興への経済力を維持できるだけでなく、中国、インドでの省エネ市場への取り組みによって日本経済活性化への起爆剤になる」という。
従来の国別削減にこだわらず、地域間での排出量取引など新発想での提案力を日本は発揮すべきだ。安易に「25%削減」の旗を降ろしてしまっては新たな展望は生まれない。
長期的ビジョンでは、さらに大胆なエネルギーシフトへの目標設定と本格的な温暖化対策が求められる。従来の発想では、安定供給源として質・量ともに力不足である自然エネルギーでは原発の代替はできない。しかし、自然エネルギーの技術開発や普及へ向け、国家を挙げた巨額投資を大震災復興事業としてできないか。これまでは、原発推進への“免罪符”程度しか自然エネルギーへの投資は行われていない。原発への巨額投資を自然エネルギーへ組み替えることで、パラダイムシフトが期待できる。