TPPテキスト開示問題、裏で何があったのか 不可解な西村康稔内閣府副大臣の一連の発言

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米国を訪問した西村氏は5月4日午後3時45分(日本時間5日午前4時45分)から、ワシントンのナショナルプレスビルの会見室で「来週以降、テキストへのアクセスを国会議員に認める方向で少し調整をしたい」と発表した。ところが7日午後5時(日本時間8日午前9時)からロサンゼルス総領事公邸で開かれた会見で、4日の発言を全面撤回してしまう。

これが連休明けの永田町に大騒ぎをもたらした。

民主党は7日午前8時から予定していた農林水産部門会議で、西村氏が述べたテキスト公開について議題に追加した。担当官である安東隆内閣官房TPP対策本部参事官は「具体的に何か決まったり、具体的に調整しているという事実は現時点ではない」と説明したが、これがかえって問題を大きくすることになった。

というのも、安東氏の発言は午前8時30分ごろに発せられたもので、9時からの西村氏の発言撤回の記者会見よりも早かった。さらに同日に開かれた甘利明TPP担当大臣の会見も9時15分からなので、参事官がいち早く副大臣の発言を撤回し、大臣に先んじて重大な対外発表を行ってしまったのだ。

もっとも非公式には、西村氏はその前にも発言を撤回していたといえなくもない。5日午後8時(日本時間6日午前9時)にはニューヨークのジャパンソサイエティで、「日本にはそうした枠組み(情報漏えいの罰則規定など)がない中で、(テキスト公開を)アメリカと同じようにはできない。昨日申し上げたのは、今後、何ができるか検討したいということ。何か方針を固めたとか、調整を行っているわけではない」と述べていたのだ。

5日の会見での発言は「公式」ではない?

しかしこの発表が「公式」と言えるものなのかが疑問がある。

というのも、4日の会見は「邦人プレス記者会見」として、在米国日本大使館の広報文化班が主催し、在ワシントンの大手メディア17社に参加を呼びかけたものだった。7日の会見も「記者会見」として、在ロサンゼルスの大手メディア12社に通知されている。

だが5日の“会見”では、呼びかけたのはジャパンソサイエティで、その対象はセミナーに出席登録した邦人プレス6社にすぎず、そのうち実際に参加したのは日経新聞と共同通信の2社のみ。さらにいえば案内に「西村副大臣の記者会見」と銘打っていたわけではなく、文面にも西村氏の名前もない。またその内容は単に「パネリストに質問してもよい」というニュアンスで、とても重大な発表があるようには見えなかった。

そしてこの“会見”の内容は、日本で報道されていない。

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