南阿蘇鉄道、熊本地震から完全復旧の1番列車走る 致命的被害の第一白川橋梁も懐かしい姿に
高森6時29分発の二番列車は、今回の全線復旧を機に実施されるようになった、JR豊肥本線肥後大津への乗り入れ初列車であり、新たに導入されたMT-4000形2両編成が、やはり大勢の乗客を乗せて立野へ向かった。一番列車は、国鉄出身で南阿蘇鉄道では最もベテランの寺本顕博運転士(68)が、二番列車は熊本地震発生後に入社、すなわち同社が復旧を決断して路線存続が確定したことにより採用された玉目一将運転士(29)がハンドルを握っている。
また、当日は11時から高森駅で「南阿蘇鉄道全線運転再開記念式典」が開催され、その列席者が乗車する高森12時20分発の記念臨時列車も肥後大津へと運転された。式典では、まずは草村大成社長が「長期間支えてもらったすべての人に感謝したい。地域と協力しながら経営で結果を出したい」とあいさつし、続いて主賓として臨席した斉藤鉄夫国土交通大臣、蒲島郁夫熊本県知事が祝辞を述べ、岸田総理も「全国の地方鉄道のモデルにつながることを期待する」とビデオメッセージを寄せた。
特定大規模災害に国が97.5%を持つ新制度
当初、復旧費は65億~70億円を要するとされ、費用の半分を国と沿線自治体両者で分担し、残り半分を鉄道事業者が負担する以前の制度の下では、年間売上高1億円規模の南阿蘇鉄道の復旧は到底無理であった。
しかし、国や県への働きかけの結果、地震翌年の2017年末に特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助が創設された。三陸鉄道復旧時の特例法を正式に制度化したもので、上下分離などの一定条件を満たせば、復旧費用を国と自治体が半分ずつ負担し、さらに自治体分には国が交付税を措置することで実質的に国が97.5%、自治体が2.5%を負担、鉄道事業者は負担なしとなる仕組みであり、南阿蘇鉄道はその適用第一号に認定された。
この際、国の交付税措置の受け皿、以後の持続的経営の担保として県の参画が必須となり、これによって上下分離の下を預かることになった一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構に熊本県が参画している。そのため、国や熊本県においても南阿蘇鉄道復旧は大きなエポックとなったのである。
式典を終えて記念列車が発車する際、不安定だった空模様が崩れて一時的に土砂降りとなってヒヤリとする場面もあったが、その後、高森駅ではお笑い芸人やアニソン歌手によるステージイベント、マルシェが開かれ、夜には花火大会も無事に開催された。立野、長陽、南阿蘇水の生まれる里白水高原、阿蘇白川、南阿蘇白川水源の各駅でもさまざまな催しが開かれたほか、JR豊肥本線への乗り入れ開始を記念し、大津町でも歓迎イベントが行われた。
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