刻一刻と迫る菅首相退場劇

刻一刻と迫る菅首相退場劇

塩田潮

 まもなく大震災から2ヵ月となる。

 菅政権は復興プランを提言する復興構想会議を新設し、連休中に復旧対策を盛り込んだ本年度の第1次補正予算を成立させたが、肝心の復興担当相の任命、復興対策の中心機関の設置や復興基本法の制定はいまだ実現していない。

 関東大震災は首相交代のときで、翌日に発足した新内閣で新任の後藤新平・内務大臣が震災対策を担い、18日後に帝都復興院を発足させた。阪神大震災のときも、当時の村山首相は3日後に震災担当相を任命し、36日後には復興対策本部設置などを定めた復興基本法を成立させている。

 今度は原発事故を伴った複合危機という事情もあり、衆参ねじれの壁もあるが、それにしても政権中枢の手の打ち方はもどかしく、意思決定の遅れが目立つ。

 菅首相の政権延命の思惑が絡んでいるのも原因の一つではないか。与野党協力態勢に結びつけて大連立を策したために復興担当相人事が宙ぶらりんになった面がある。昨夏の参院選敗北のときも「短期間の首相交代はよくない」という世論が続投を後押ししたが、大震災後も「国難。政争不可」という国民の声が菅降ろしを封じ込んでいる。トップリーダーとして震災対策でも有効打が出ない菅首相には、「国難」は最大の掩護射撃である。

 5月6日に中部電力の浜岡原発の全面停止要請を発表したが、英断と評価する声が上がる一方、連休後に再燃しそうな菅降ろしへの先制攻撃では、といった意地悪な見方も出た。大震災後、場当たりの対応、思いつきの言動、手柄演出の計算が目立っていたからだ。

 連休明けと同時に政治休戦終了で、菅降ろし再燃と腕まくりする政治家も多いが、国難は続いていて、国民はいまも永田町の権力闘争には冷ややかだ。

 菅首相はその世論に助けられ、しばらくは政権を維持できそうだ。しかし、有効な復興対策も日本再生の抜本的プランも打ち出せず、ただ首相の椅子に座っているだけという状態が続けば、世論はあっという間に「国難にふさわしくないリーダーは早期退場を」という声に変わる可能性がある。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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