また、小学校3年生から利用するパソコン室も見学したが、レゴ社の教育ロボット、マインドストームが置かれていたり、壁にはQRコードが貼られ、タブレットなどでそれを撮影すると「パスワードはなぜ必要か?」といったクイズが現れ、宝探しを行うツールになっていた。インターネットを使用する際の注意事項をイラストとともに楽しく学ぶ工夫も見られた。
重要なのは、いかに「創造力」を育むか
確かに、タブレットやネットは授業で使われていたのだが、先進的なIT教育で知られる学校と聞いて期待したほどは多くなかった。何となく裏切られた気分だ。そこで、先生に率直に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「よく聞かれるのですが、ITはツールでしかないのです。子どもたちの五感をフルに使った、創造性を育む教育を重視しています。創造力があって初めてITが生きてくるのです。そのうえで、テクノロジーが楽しいと思える子ども、そしてそれがどのように動くかを理解できる子どもを育てたいと思っています」
そう言われてみると、確かに見せてもらった授業は手を動かしたり、体を動かしたりする授業が多かった。体育の授業では、体育館で座布団をスキー板のように使って競い合っていたものもあった。エストニアは雪が降らないときもあるので、スキーがどのようなものか、このようにして何となく体感してもらうのだと言う。
IT教育、プログラミング教育が論理力育成とともに子どもたちの創造力を育むと言われているが、IT教育先進国と呼ばれている国が、IT以外に実際に体を動かすことで創造力を開花させようとしているのはとても興味深い。
また、廊下を歩いていると、小学生の子どもたちが休み時間中、スマホやタブレットを触りながら絵を描いている様子がよく見られた。子どもに聞いてみると、家から持ってきたスマホでYouTubeの動画を見ながら絵を描いているという。同校は、小学校1年生のスマホ所持率が91%。BYOD(Bring Your Own Device)で学校がスマホやタブレットを持参することを認めている。
日本では2011年に文部科学省が「教育の情報化ビジョン」の中で、2020年までに1人1台タブレットをという方針が掲げられているが、現在は6人に1台の普及状況。1人1台を行政が負担して実施しようとすると、約700億円かかると言われている。その中で、BYODという選択肢も考えられるのではと思った。
また、放課後の活動でもITが使われている。たとえば、「Smartlab」と呼ばれる放課後教育。2012年から始まったマイクロソフトも投資する産官学連携事業で、10歳から19歳の子どもたちが、プログラミング、ロボット工学、モバイルアプリ、ウェブデザインについてエストニア国内で36グループを作って学んでいる。予算は14万ユーロ(約2000万円弱)。
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