「歴史問題は封印して前進」日米韓首脳会談の危険 覚悟ない岸田、譲歩する尹、スルーのバイデン

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一方、日本政府は韓国ほど危機に直面していない。筆者が今冬東京で聞いたところによれば、日本のエリート政策関係者の間では、尹大統領が関係改善のために重大で政治的に危険なステップを踏んでおり、その努力を支援することが日本の利益であるとの認識が共有されている。

だが、岸田首相は歴史問題で大幅な譲歩をすることには消極的で、おそらく政治的に不可能だった。強制労働の被害者と、その子孫に対して補償をするために韓国が利用する基金への資金提供を日本企業に促すことについては特に、だ。岸田首相はまた、日本の戦時中の行動や植民地支配の問題に直接取り組むことを望んでいない。

このことは韓国人に広く知れ渡っており、尹大統領があらゆる面で一方的に譲歩したが、日本側は本質的に何もしなかったという韓国人の見解につながっている。

封じ込められた「歴史問題」

岸田首相は、自民党の保守的かつ、歴史修正主義的な力によって事実上制約を受けている。次期選挙で自らがコントロールを握れる立場にならないかぎり、歴史問題で必要な措置を講じることは難しい都感じているかもしれない。とはいえ、岸田首相自身、歴史問題にもっと直接的に向き合うことに、個人的な関心や信念を示したことはない。

歴史問題は事実上、封じ込められ、解決済みでもあるという信念が日本政府にはあり、アメリカ政府も共鳴し、韓国の大統領府もある程度は受け入れている。それはおそらくキャンプデービッドの首脳会談の結果に反映されるだろう。しかし、それは幻想であり、危険なものとなる。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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