インバウンド客相手にボロ儲けする悪い奴ら 利益丸ごと価格転嫁から偽ブランド品販売まで

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確かに富裕層であれば、金額を少々上乗せしたところで気づかれないかもしれない。しかも今の日本は歴史的な円安水準だ。訪日観光客にしてみれば、自国と比べて格安に映るのだろう。

そうした状況をいいことに、「ありえない値付けをしているケースは後を絶たない」とインバウンド関係者は明かす。

「確かに会社は儲かるが、モラルが崩壊している。完全にマヒしている社長にはもうついていけない」

この社員は転職を検討しているという。

訪日外国人客数の推移

富士山のふもとに…

狙われているのは、何も富裕層の訪日観光客だけではない。

「秋以降、またあのゴールデンルートが復活するのだろうか……」と、あるインバウンド関係者は心配する。

この関係者が言うゴールデンルートとは、東京から出発して富士山のふもとに立ち寄り、大阪に行って、関西国際空港からLCC(格安航空会社)で帰国するルートのこと。

新型コロナウイルス感染症が流行する前、中国からの訪日観光客が押し寄せていたときににぎわったルートだ。

当時を知るインバウンド関係者によれば、「富士山のふもとの、表通りからはわかりにくい所に、次から次へと観光バスが滑り込んでいっていた。1〜2時間後、客はキャリーケースをぱんぱんにしてバスに戻り、帰路に就いていた」という。

いったい、富士山のふもとに何があったのか。

「高級ブランド品を格安で大量に売りさばく大きな店がいくつかあった。そのすべてが実は偽物。とはいえ、本物と見まがうほど精巧にできたものばかりで、訪日観光客には人気だった」としたうえで、「立ち寄る観光客たちも偽物であることは認識していたが、かなりの安さだったため購入していたようだ」とこの関係者は明かす。

ただ、こうした店はコロナ禍で訪日観光客の入国が禁止された頃にすべて姿を消したといい、今では確認することができない。

「以前の客の大半は中国から来た人たちだった。中国の団体旅行が解禁されたことで、秋以降、再び中国からの観光客があふれるだろう。かつてほどの『爆買い』はないかもしれないが、復活する可能性はある」(関係者)

インバウンドの復活は日本経済にとって大きなインパクトだ。しかし、ここで見てきたような事業者が増えてしまうようでは、訪日観光客からの信頼を失いかねない。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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