3社協議の3日前となる昨年7月11日、ビッグモーターの兼重宏行前社長は損保ジャパンの中村茂樹専務執行役員(当時)を訪ねている。本来であれば、その会談の場で「なぜ従業員の証言内容が一変したのか」と兼重氏を問い詰めるべきだが、そうした対話があったという声は聞こえてこない。
訪問の趣旨は「お礼」と兼重氏は発言
むしろ関係者から聞こえてくるのは、兼重氏が今年7月25日の記者会見でいみじくも語ったように、「事故車入庫再開(方針)のお礼」といった類の話だ。ビッグモーターは慌てたように、記者会見後、同社ホームページで「兼重の当時の記憶に事実誤認がありました」と訂正したが、同会談の前後数日の間に入庫誘導の再開方針を損保ジャパンが伝えていたとみるのが自然だろう。
そうした損保ジャパンの不可解な対応方針をまとめたのは、中村氏だ。白川社長にその方針を伝えたのは、3社協議の数日後とみられる。その後、損保ジャパンは2022年7月19日に金融庁に出向き、証言内容が一変した事実にはいっさい触れずに、不正の指示は確認できなかったと虚偽報告。そして7月25日に入庫誘導の再開に踏み切っている。
早期の幕引きでうまく逃げ切るつもりだったのかもしれないが、同業の損保2社を完全に敵に回したことのツケは大きかった。ヒアリングシートの信憑性に、当初から強い疑義を抱いていた東京海上が、昨年8月下旬に改めて工場の従業員に聞き取りをし、「不正の指示があった」という証言を執念で引き出してみせたのだ。
それを聞きつけた損保ジャパンは、さすがにまずいと考えたのか、9月14日になって入庫誘導を再び中止したというのが一連の流れだ。
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