損保ジャパンとビッグモーター、取引再開の深層 「不正指示」の証言はなぜ握り潰されたのか

✎ 1〜 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

最大の焦点となるのは、2022年6月のビッグモーターによる自主調査だ。ビッグモーターに出向者を出していた損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の損保大手3社は、関東地方にある4つの板金工場を対象に自主的な調査をするよう、ビッグモーターに要求。加えて、それまで3社で競い合っていた事故車の紹介(入庫誘導)については、全33工場のうち25工場で停止する措置をとった。

自主調査を渋々受け入れたビッグモーターは、関東4工場の従業員に対してヒアリング調査を実施。ヒアリングを行うメンバーには、ビッグモーターの社員だけでなく、損保ジャパンと三井住友海上からの出向者も加わっている。

そのヒアリングでは、複数の工場の従業員から「工場長の指示で日常的に過剰な自動車の修理を行ったうえで、保険会社に対して過剰な修理費を請求している」という趣旨の証言があり、3社は6月下旬までにその報告を受けているという。

修理費の水増し請求が単なる過失ではなく、組織的な不正である疑いが一段と強まった瞬間だった。

実際に損保ジャパンの白川儀一社長は今年7月、報道陣によるぶら下がり取材で「工場長からそういう(不正の)指示があったと把握しているという話が、(出向者から)私ども経営(陣)のほうにも連絡があった」と語っている。

報告書では「真逆」の内容に一変

ところがだ。ビッグモーターが昨年6月30日に3社に提出した自主調査の報告書は、出向者から聞いていた内容と真逆のものになっていた。ヒアリングの結果、工場長などによる不正の指示は確認できず、水増し請求の真因は事務連携上のミスや従業員の技術不足だ、と結論付けていたのだ。

しかも、報告書に添付されていたヒアリングシートは「不正の『指示はなかった』という内容になっており、証言した従業員とヒアリングを担当した出向者の署名もあった。いったいどう受け止めればいいのか、署名を偽造しているのではないか、など新たな疑念が噴出して当時は非常に困惑した」と大手損保の幹部は振り返る。

次ページ東京海上と三井住友海上は当然猛反発
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事