楽天モバイル「契約倍増」の大胆目標に拭えぬ不安 赤字は大幅縮小、黒字化の具体的条件にも言及

拡大
縮小

仮に「フェーズ3」として楽天が示した2024年中の黒字化を目指すならば、1年余りで300万以上の回線数を積み増す計算となり、現状比で2~3倍の爆発的な伸びが必要だ。

楽天モバイルでは、6月に新プラン「最強プラン」を投入したばかり。ただ、データ大容量帯以外では競合の大手3キャリアの新料金プランと比べても大きな価格差がなく、ユーザーを奪い取るためのハードルは高い。秋以降のマーケティング施策が奏功するかが、今後のカギになるだろう。

立て続けにキーマンが離脱

先行きをめぐっては、もう1つ懸念材料がある。楽天モバイルで代表取締役共同CEOを務めていたタレック・アミン氏が、8月7日付で突如辞任したことだ。「家庭の事情」(楽天モバイルの広報担当者)が理由だという。

楽天モバイル元代表取締役共同CEOのタレック・アミン氏
8月7日に辞職したタレック・アミン氏。モバイル事業のキーマンの1人とされてきた(撮影:尾形文繁)

通信関連の技術動向に詳しいアミン氏は、三木谷会長直々のオファーを受けて2018年に入社。クラウド技術などを駆使した完全仮想化の通信ネットワークを楽天モバイルで構築した立役者だ。海外の通信キャリアなどにも幅広い人脈を持ち、楽天のモバイル事業の顔と言える人物の1人と目されていた。

アミン氏は、楽天モバイル子会社で海外のキャリア向けに通信ネットワークの提供を手がける楽天シンフォニーの社長も務めていた。海外に顔が利くアミン氏の辞職は、楽天シンフォニーの今後の展開にも不安を残す。

モバイル事業の中枢を担う幹部が去るのは、同氏が初めてではない。2022年3月には、楽天モバイルを率いてきた山田善久・元社長が退任し、楽天グループを去った。

キーマンの相次ぐ離脱による影響をはねのけ、モバイル事業は飛躍することができるのか。その見極めには、今しばらくの時間が必要だろう。

高野 馨太 東洋経済 記者

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たかの けいた / Keita Takano

東京都羽村市生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中に中国・上海の復旦大学に留学。日本経済新聞社を経て2021年に東洋経済新報社入社。担当業界は通信、ITなど。中国、農業、食品分野に関心。趣味は魚釣りと飲み歩き。

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