楽天モバイル「契約倍増」の大胆目標に拭えぬ不安 赤字は大幅縮小、黒字化の具体的条件にも言及

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楽天モバイルでは今秋以降、2つの理由で通信品質の改善を見込んでいる。

1つはKDDIから通信回線を借り受ける「ローミング」の進展だ。秋ごろをメドにKDDI回線を利用できる繁華街などのエリアが広がることなどによって、ユーザーの通信品質がさらに改善される見通しだという。

2つ目は、かねて求めてきた「プラチナバンド」が早ければ今秋にも総務省から割り当てられ、今年の年末から年明けにかけて使えるようになる可能性があるからだ。プラチナバンドは屋内でも通信がつながりやすい4G用の周波数帯で、獲得できればKDDI回線に頼らずとも、自社回線エリアの通信品質向上が期待できる。これらの追い風を前提に、楽天は秋以降に販売促進のマーケティング活動を強化する考えも明らかにした。

こうした点を踏まえて、楽天は当面目標とする契約数として、現状の1.6~2倍に当たる「800万~1000万」を掲げた。顧客単価を2500~3000円とした場合(2023年4~6月期実績は2010円)、その契約数に到達すれば、EBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)ベースで黒字化できるという。

楽天は当初、2023年中の達成を掲げていたモバイル事業の単月営業黒字化の目標を、2023年5月に撤回していた。その代わりとして、時期的なメドは曖昧にしたものの、ここにきて黒字化の具体的な条件を示した格好だ。

単純計算では2年半かかるが・・・

ただ、黒字化に向けた道のりは依然として難路が予想される。

モバイルの契約数は2023年7月末時点で491万。直近7月の月当たり純増数は10万だった。黒字化の最低水準となる800万までには300万超の回線数を積み増す必要があり、このペースでは2年半近くかかる計算となる。

これは足元の資金繰りに悩む楽天にとっては、あまりに悠長といえる。モバイル事業への巨額投資のために社債発行を続けた結果、楽天は2025年までに約9000億円の劣後債・社債の償還が控えている。手元資金の確保に窮する中、5月に大規模な公募増資に踏み切ったほか、7月には楽天証券ホールディングスの上場を申請した。

一部では、中間決算と合わせて事業再編を発表した楽天カードについても、株式上場を検討していると報じられた。会見で三木谷会長はその可能性を否定せず、「今後の状況をみて判断していく。(楽天カードの規模が)大きくなってきたから、いろいろ(選択肢を)考えられる」と言葉を濁した。

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