有罪になったらトランプ氏は大統領になれるのか 「国民の裁き」次第で恩赦も、選挙が運命を握る

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だが、トランプ氏のこれまでの言動からも、少なくとも選挙前、同氏が司法取引に合意する可能性は低いであろう。

アグニュー副大統領の時代と大きく異なるのが、アメリカの深刻な二極化社会だ。

アグニュー氏は自らの潔白を訴えたものの、共和党エスタブリッシュメントは同氏を見捨て、保守系メディアの支持も集めることができなかった。だが、今日は状況が違う。共和党のケビン・マッカーシー下院議長もトランプ氏を擁護。保守系メディアはトランプ氏の強力な味方だ。

トランプ氏は1970年代にはなかったソーシャルメディアを巧みに利用し、共和党の岩盤支持層に直接訴えかけることで、計り知れない影響を及ぼすことが容易となっているのだ。

バイデン大統領に「息子の嫌疑」で反撃

トランプ氏は、司法捜査を民主党バイデン政権の「政治的迫害」「魔女狩り」と訴えることで、共和党内の支持固めに成功している。

さらに追い風が吹き始めているのが、バイデン大統領の息子ハンター氏の嫌疑だ。共和党やトランプ氏は、「おまえだって論法」でハンター氏の司法問題について「大統領は身内には対応が甘い」と訴え、トランプ氏の疑惑から世間の目を逸らそうとしている。

したがって現状、トランプ氏は司法取引をせず、大統領選勝利に自らの将来をかける可能性が高い。つまり、裁判所ではなく、選挙を通じた世論という法廷で裁かれることを狙う。

だが仮に大統領選で敗北し民主党政権が発足すれば、政治生命だけでなく人生そのものが狂うリスクを秘めている。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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