アメリカの衰退に忍び寄る「内戦」と「革命」リスク トクヴィルも警告した「最も危険な時期」の到来

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オバマ・トランプ・バイデン政権は本質的にはひとつながりの改革の動きであるというのは、専門家の間では徐々に共通理解となりつつある(写真:Chip Somodevilla/Getty Images)
2021年1月、アメリカ、そして世界に衝撃を与えた「Qアノン」煽動による前代未聞の連邦議会襲撃事件。次期大統領選への出馬を表明しているトランプ氏の動向次第では、再びこのような事態を招くのか。さらには2度目の「南北戦争」を招いてしまうのか。
世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が分析し警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)を、アメリカの保守思想に詳しい会田弘継氏が読み解く。

現代アメリカにも当てはまる洞察

「悪しき政府にとって最も危険な時期とは、一般に自ら改革を始めるそのときである」

『アメリカは内戦に向かうのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

冷戦終結間際の1990年前後、ゴルバチョフ共産党書記長の下で旧ソ連はペレストロイカと呼ばれた改革路線を突っ走っていた。その当時、アメリカの知識社会でときおり引用されていたフランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルの言葉である。『旧体制と大革命』の一節だ。

結局、旧ソ連の改革は共産主義旧体制の維持を図る守旧勢力の反動クーデター未遂からソ連邦解体、ゴルバチョフ失脚となり、「悪しき政府」の改革は失敗した。そのツケは、いまのウクライナ戦争にまで回ってきている。

トクヴィルは大革命(フランス革命)前後数十年を視野に収めて『旧体制と大革命』を著したが、冒頭に掲げた一節だけでも、その洞察の鋭さには驚く。

アメリカ現代政治を論ずるとき、どうも議論が狭くなりがちだ。昨今の雲行きでは2024年大統領選挙もバイデン大統領とトランプ前大統領の対決になりそうな気配だが、不確定要因はトランプをめぐるさまざまな刑事事件捜査の進展である──というあたりに議論が集約されてしまう。

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