専門医が教える「肝臓にまつわるウソ」と新常識 脂肪肝、アルコール…SNSで蔓延するウソホント

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肝臓の常識のウソ⑥ 肝炎になったら一生治らない?

ウイルス性肝炎には、A型からE型まであります。ABCDEというのは、ウイルスの種類です。見つかった順に付けられた名前で、ウイルスのタイプがそれぞれ違います。D型は日本ではあまり見られません。

結論からいいますと、「一生治らない」というのはウソです。ウイルス性肝炎の研究は日進月歩で進んでいます。治りにくいタイプでも、かなりよい薬が開発されています。患者さんの数は非常に多く、けっして他人事ではありません。くわえて、肝炎に限らず、ウイルス性の病気の患者さんが理不尽に差別されるケースもありますから、ぜひ最新情報と正しい知識を共有してほしいと思います。

まずは医師に相談

では、タイプ別にみていきましょう。まず、A型とE型は食べ物で感染します。いってみれば食中毒のようなもので、特殊なケースを除き、たいていの場合は慢性化する心配はなく、普通は治ります。ただし、まれに劇症になって死亡する人もいます。

A型は魚介類からの感染が多く、E型はレバ刺しのような「生の肉」から感染します。A型もE型も、きちんと処理されていない魚介類やホルモンは生焼けで食べないなど、自分で注意して防ぐことができます。

B型とC型は、ウイルスに感染している人の血液を介して感染します。まだ学校の集団接種で予防注射の針を使い回していた数十年前のことですが、たくさんの人がウイルスに感染して社会問題になりました。たとえば、ピアスの穴をあけるときでも、他人に使われた針を消毒して使わなければ、感染する可能性があります。それより危険性が高いのは、タトゥー(入れ墨)です。しかし、衛生観念が高まった今では、どちらもほとんどなくなりました。

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現在でも、B型とC型を合わせて100万〜200万人も患者さんがいるのですが、よい薬が開発されてきたので、患者さんはどんどん減っています。とくに、C型肝炎は完治する薬ができたので、かなり安心です。副作用がほとんどなく、2カ月も飲み続ければウイルスが消えます。将来、C型肝炎で亡くなる人はいなくなるでしょう。残念ながらB型のほうは、完治できる薬がまだありませんが、それでもいい薬はあります。

B型もC型も、衛生管理が行き届き、治療薬の開発も進んできた現在、かつてのように怖がる必要はもはやありません。とはいえ、肝臓がんにつながることもある危険な病気であることは確かです。しかも、厄介なことに、感染者の8割にまったく自覚症状がないので、本人も知らないうちにウイルスに感染し、そのまま肝臓にウイルスが潜んでいるという人が少なくありません。

肝炎ウイルス検査を受けたことがない人は、一度でいいので検査に行ってください。市区町村や職場の健診で無料で受けられます。検査を受けて、もしもウイルス性肝炎だとわかったら、すぐに専門医に相談してください。肝炎の人は「高タンパク食品を」とアドバイスしている本などもありますが、まずは専門医を受診すること。食事は二の次だと思ってください。

浅部 伸一 肝臓専門医、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授

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あさべ しんいち / Shinichi Asabe

1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がんセンター研究所で主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社所属。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料はワイン、日本酒、ビール。

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