専門医が教える「肝臓にまつわるウソ」と新常識 脂肪肝、アルコール…SNSで蔓延するウソホント

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「ご飯大好き」「スイーツ大好き」という人は、糖質を必要以上に体内に取り込むことになります。そうなると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンもどんどん増えていきます。ところが、困ったことに、肝臓はそれほど多くのグリコーゲンを蓄えておくことができません。そこで、肝臓は多すぎるグリコーゲンを「中性脂肪」に作り変えます。食事で油をあまり取らなくても、糖質をたくさん取っている人が太る(=脂肪が増える)のはそのためです。

そして、脂肪は血液に乗って体中をめぐるのと同時に、肝臓にもしっかり居座って、肝細胞一つひとつにたまっていき、それが脂肪肝になっていきます。スイーツをはじめ糖質の多いものを食べすぎていると、脂肪肝がたまり、正常な肝臓の細胞を圧迫して、肝臓の機能を落としていくのだと覚えておいてください。

肝臓の常識のウソ② 脂肪肝は肝臓の外側に脂肪がくっついた状態?

「内臓脂肪」が胃や腸などの「臓器の周囲につく脂肪」のことだと知っている人は、脂肪肝もまた、肝臓の周囲に脂肪がべっとりまとわりついた状態なのだろうと想像するかもしれません。これも誤解です。

「脂肪肝」とは、肝細胞(肝臓を形成している細胞)に脂肪がたまる病気です。内臓脂肪のように肝臓のまわりに脂肪がくっつくのではなく、肝細胞の一つひとつの中に、水滴のような形で脂肪がたまるのです。

脂肪と聞くと、豚肉の白くて硬い脂身などが思い浮かびますが、あの見慣れた脂身は、脂肪の温度が下がり、固体に変化した状態です。人間も含めて、生きている動物の脂肪はもっとずっと柔らかく、内臓脂肪もゲル状です。体温で溶ける良質のバターのようなものだと思ってください。脂肪肝の脂肪も同じように、粘性はありますが、柔らかいものです。肝細胞の中に、ぷよんぷよんとした水滴のような状態で存在しています。

女性は更年期で体質が変わる

肝臓の常識のウソ③ 脂肪肝は男性がなるもの、女性でなる人は少ない?

NASH(非アルコール性脂肪肝)になるのは、若い人では男性が多く、最近では女性が多くなっています。女性は特に閉経後に増えます。これは、女性ホルモンのエストロゲンが影響していると思われます。

エストロゲンには、体内の炎症を起こりにくくしたり、内臓脂肪をたまりにくくしたり、筋肉をある程度維持したりと、よい作用がたくさんあります。それが閉経とともに全部なくなってしまうわけです。そのため高齢女性は、炎症を伴うNASHになるリスクが高まると言われています。

そもそも男性は女性よりリスクが高いのですが、閉経後の女性は、体質が男性に近くなっています。更年期を迎えた女性は、若い頃とは根本的に体質が変わるのだと考えてください。若い頃と同じように食べていれば、脂肪肝になるのはあたりまえです。とくに更年期や閉経後に急に太った女性は要注意。思い当たる人は検診を受けましょう。

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