専門医が教える「肝臓にまつわるウソ」と新常識 脂肪肝、アルコール…SNSで蔓延するウソホント

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肝臓の常識のウソ④ 肝臓が弱っているときはレバーを食べるとよい?

「肝臓が悪ければ、レバーを食べればいい」などと聞いたことがあるかもしれません。悪い内臓と同じ部位を食べるといいというのは、「同物同治(どうぶつどうち)」といって、東洋医学に根ざした考え方です。

たしかに、レバーは栄養価が高く、しかも低カロリーの優秀な食材です。たとえば豚肉のレバーにはビタミンAが多く、葉酸やビタミンB1・B2・B12も豊富です。けれど、それらの栄養素はほかの食材でも摂ることができます。

むしろ、肝臓が悪い人はレバーの食べすぎに注意してください。なぜなら、レバーには鉄分が多く含まれているからです。特に不足していない人が鉄分を取りすぎると、体内で炎症が起きることがあります。そして、その炎症は、特に肝臓で起きることが多いのです。

肝臓の常識のウソ⑤ 酒飲みは「休肝日」をつくるべき?

「週に1日は休肝日をとりましょう」と聞いたことがあるかもしれません。そうかと思うと、「週に2日は休肝日を」と説く本や、「休肝日なんていらない」と主張する専門家もいます。いったい、何が正しいのでしょうか。

問題は、「アセトアルデヒド」という有害物質です。お酒を飲むとアルコールの成分はすぐに腸で吸収され、血液中に入ります。その9割は肝臓の代謝機能で分解されます。肝臓で分解されたアルコールがアセトアルデヒドに変わります。そのあと、アセトアルデヒドは水や二酸化案素などに分解され、やがて体の外に出て行きます。

体内にアセトアルデヒドが長時間あると、二日酔いや悪酔いの原因になるのですが、このアセトアルデヒドを分解する時間は人によってかなり違います。

「お酒に強い人」=「肝臓が丈夫な人」という誤解

アセドアルデヒドを分解する能力は、生まれつき高い人と低い人がいます。分解能力の高い人は、いわゆる「お酒に強いタイプ」、分解能力が低い人は「お酒に弱いタイプ」、その中間が「そこそこ飲めるタイプ」です。3つのうちのどのタイプなのかは遺伝で決まります。日本人の約1割は「弱い」タイプだと言われています。

ところで、ここが大切なポイントですが、「お酒に強い人」「そこそこ飲める人」=「肝臓が丈夫な人」というわけではありません。お酒が強い人でも大量に飲み続けていれば、アルコール性肝障害や肝硬変になる可能性はあります。

大切なのは、体内のアセトアルデヒドをなるべく早く分解すること。そのためには、お酒を飲みすぎないこと、つまりお酒の「総量規制」が必要です。肝機能を下げないために、どのタイプの人も「適量」を、それも時間をかけて飲みましょう。毎日大酒を飲む人なら、ときには休肝日を設けるのもいいですが、肝臓を「休ませる」よりも、「適量」でやめておくのを心がけましょう。

では、「適量」とはどのぐらいの量でしょうか。厚生労働省は「一日20g(純アルコール換算)」を適量としています。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワインなら2〜3杯に相当します。

ただし、前述したように、アセトアルデヒドの分解能力には個人差が大きいので、「適量」にも個人差があるということになります。「二日酔いしない」「気分が悪くならない」「悪酔いしない」ことを「適量」のひとつの目安にしてください。

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