「文系学生は門前払い」就活に苦しむ院生の嘆き 研究時間減少、企業の理解の少なさ等の問題も

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前回の記事『「大学院進学」の減少が止まらないこれだけの理由』で触れた全国大学生協連の「全国院生生活実態調査」では、全国の院生4645人から寄せられた回答の中にも、研究と就活の両立ができないといった声が多数挙がっていた。

具体的には、就職活動に時間を取られて修士論文が予定通りに進んでいないときに、教授から詰められるケースなどがあった。特に理系の場合は、就職活動を進めるために実験をいったん止めなければならないなど、かなり支障が出ているようだ。大学院生の生活実態と就職活動が合っていないと言えるのではないだろうか。

ただ、インターンの負担は、通常は修士1年の冬頃までの時期に限られる。その後、就職活動が本格化すると、Aさんにとって研究との両立はますます厳しくなった。修士論文は1年の秋から冬にかけて構成を考えて、春休みを使ってインタビューやアンケートなどの調査を進める。修士論文の準備をするうえで重要なこの時期に、就職活動もピークを迎えるのだ。

「エントリーシートを書いた2月頃から、面接が行われる4月頃がきつかったですね。エントリーシートは20社くらい書いて、最も時間を取られました。企業が求めていることはそれぞれ違いますので、限られた字数の中で何を伝えればいいのか悩みます。内定をもらえたメーカーのときは8時間かけて書きましたし、最低でも1社あたり1時間半以上はかかっていたと思います」

深夜にようやく帰宅する日々

「この時期は修士論文に取り組むことに加えて、学年末のレポートや、学部生の卒業論文のサポートなどもありました。深夜1時や2時にようやく家に帰ってきて、それからエントリーシートに取り組むような状態でした」

エントリーシートが選考を通過すれば、面接に進む。面接は一度だけではない。結果を待っている間の心労は、就職活動をしている誰もが感じるところだろう。

学部生にとっても就職活動が大変なのはもちろんだ。ただ、大学院生の場合はそもそも研究活動が多忙なため、学部生と同じ条件で活動するのは、物理的にも精神的にも負担が大きい。大学院への進学を決める段階で就職活動のスケジュールを知っておけばよかったとAさんは痛感した。

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