「文系学生は門前払い」就活に苦しむ院生の嘆き 研究時間減少、企業の理解の少なさ等の問題も

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こうした理系偏重の動きに、文系の大学教員だけでなく院生としても疑問を持つのは当然のことだろう。Aさんも疑問を次のように口にした。

「すぐに社会の役に立つというか、わかりやすく目に見えるような学問にだけ力を入れて、本当にそれでいいのだろうかと思っています。文系の学問は、社会の根底にある考え方や、自分たちの文化がどのように発展してきたかといった基礎的な研究がほとんどです。それこそ文化は一度で終わるのではなく、これからもどんどん変化していきます。その部分をなくしてしまうと、人間の文化的な生活にも影響が出てくるのではないでしょうか」

企業側にも文系院生の実情を知ってほしい

Aさんは就職活動を通して、文系の大学院生に対する社会の理解が乏しいことを感じた。その経験を「今になって思えばよい経験だったかもしれない」と振り返り、今は文系の大学院生について知ってもらうことが必要だと考えている。

「私自身、大学院での研究活動を通して、学部生の頃よりも成長できていると感じています。調査を通じていろいろな立場の人や、幅広い年齢層の人と出会うことができました。その過程で培ったコミュニケーションを取る力や、分析する力は、社会に出ても役に立つと思います。

また、研究自体も社会を発展させるうえでの基礎的な研究を担っています。確かに研究と就職活動の両立は大変ですが、多くの院生は両立させようと頑張っています。文系の大学院生の実情や、大学院で学ぶことの価値を、もっと多くの人に知ってもらいたいですね」

田中 圭太郎 ジャーナリスト・ライター

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たなか けいたろう / Keitaro Tanaka

1973年生まれ。1997年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。雑誌やWebメディアで大学、教育、経済、パラスポーツ、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房)。

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