シャンシャンが半年「非公開エリア」で暮らす事情 中国国内でも高まる人気、SNSでもいいね!が沢山

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ツーリストセンターでチケットを買う。料金は、大人一般の当日券で100元(約2000円)。景勝エリアと雅安基地の入場料や、ツーリストセンターと雅安基地の間のバスの往復運賃も含まれている。このバスに乗り、10分足らずで雅安基地に到着した。

雅安碧峰峡基地の入り口(筆者撮影)

雅安基地は約70haの敷地で約65頭のパンダを飼育していて、このうち約40頭を公開している。5月のメーデーの連休などを除けば来場者は少なく、パンダの前にいる観客が自分だけになることも珍しくない。

シャンシャンは緊張していた

入場してほどなく、数頭のパンダが左手に見えた。道を挟んで右手は立ち入り禁止の検疫エリアで、ここにシャンシャンがいる。シャンシャンは、規定の30日間の検疫を3月22日に終えたが、6月12日時点でも非公開の検疫エリアで暮らしていた。

なぜ公開されないのだろう。この日、飼育員さんに中国語の翻訳アプリを使って尋ねると、「timid」と英語で答えてくれた。「内気な、臆病な」という意味だ。「シャンシャンは緊張していました。長距離移動が初めてだったせいもあるでしょう」という。

シャンシャンは上野動物園にいたときから繊細な性格だった。例えば2022年7月4日、パンダ舎の冷房工事のために、シャンシャンは一時的に西園のパンダ舎へ移動した(参照:『上野の「シャンシャン」初の引越しを追ってみた』)。人間の足で歩いて、わずか10分ほどの距離だ。

1週間後の7月11日にシャンシャンは元いたパンダ舎へ戻ったが、落ち着きを十分に取り戻せずにいた。物音に反応して、エサを食べるのをやめることもあった。上野動物園の飼育係は、シャンシャンが移動に加え、西園での慣れない生活の影響により、生活リズムを取り戻すのに時間がかかっていると判断。7月19日から予定していた公開再開を8月2日に遅らせた。

中国へ旅立った2023年2月21日は、トラックの荷台にのせられて上野動物園を出発した。成田空港に到着した荷台のシャンシャンは緊張していて、知らない人が近づくたびに怒って吠えた。同園の飼育係が声をかけながら近づくと、吠えるのをやめた。

また、上野動物園はシャンシャンと観客の間をガラス壁で隔てていたが、雅安基地の屋外はガラス壁がほとんどないので「人の声や機械の音が聞こえることもあります」(雅安基地の飼育員さん)。

雅安基地では、こうしたことを考慮して、シャンシャンが新たな環境に十分適応できるように公開まで時間をかけている。いつ公開されるかは、2023年8月10日時点で明らかになっていない。

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