アメリカの「利上げ継続懸念」はまだ消えていない 「インフレは沈静化した」と見るのはまだ早い

拡大
縮小

一方で、消費者物価指数が再び予想を上回り、「インフレが高止まりするリスクが高まった」との見方が強まれば、FRBは「FOMC会合ごとにデータを見て金融政策を決定する」との従来の方針を維持、次回の9月かその次の10月31~11月1日の会合で0.25%の追加利上げに踏み切る可能性もあると見ておいたほうがよい。

では、なぜ筆者はインフレ圧力がこのまま後退するよりも、むしろ再び高まり、「FRBが追加利上げを打ち出さざるをえなくなる可能性がある」と見ているのか。

6月のCPIが株価大幅上昇のきっかけとなったのは、とくにコア指数や住居費やサービス価格など、いったん上がるとそう簡単には下がらないと見られていた分野の伸びまでもが大幅に鈍化したことがサプライズになった。

「ベース効果」に惑わされてはいけない

だがこうした傾向が続き、インフレ圧力が順調に後退するとの見方は楽観すぎる。確かに6月の消費者物価指数は前年比3.0%上昇と、5月の4.0%から1ポイントも急低下。エネルギーと食料品を除いたコア指数も同4.8%と、5%の節目を割り込んだ。

だが、これは「ベース効果」とよばれる、前年の上昇分がきつすぎて発射台が高くなったために、低めの数字が出たという部分が大きい。具体的に言うと、2022年6月のCPIは総合指数が前年比で9.1%と、今回の物価上昇局面で一番高い伸びを記録した。

これは昨年2月24日にロシアがウクライナへ侵攻したことを受けて商品価格高騰の影響が、一番大きく表れた結果だった。

今回の数字は、ここからさらに物価がどれだけ上がったのかを見ることになるわけだから「伸びが低くなるのは当然」だ。昨年は7月以降、エネルギー価格の急落が主導する形で、急速に物価の伸びが鈍った。今後は逆にベース効果が薄れていく中で、前年比での伸びが強まる可能性の方が高くなると見ておいたほうがよい。

次ページ好調な雇用と商品価格の再上昇に警戒が必要だ
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT