栗山氏「二刀流正しかったか"わからない"」の本音 侍ジャパンの監督を終えた今、考える「今後の展望」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この意識の在り方は、一見すると「長期的な視野を持つこと」のアドバイスと対立するかのように思えるかもしれない。しかし、長期的な目標を持つことは、それを達成するためには何をすべきか、どんな行動が必要かを明らかにする。

そしてその行動は、今この瞬間に起こすべきものであり、「今日だけは絶対にやる」という栗山氏の言葉につながる。続いて栗山氏が引き合いに出したのは、投打の二刀流で大リーグを席巻している大谷翔平選手だった。

「翔平は『今じゃないんです』って、トレーニングしていてもずっと言っていました。将来こういう動きができないと、自分のやりたい野球ができないから、今、疲れていても、筋肉痛になろうとも、このトレーニングをしなきゃいけないって、彼はやっていました。

あの若さで『今じゃない』って言える選手、すげえなと思って見ていました。目標設定から逆算して今日やるべきことが分かれば、その積み重ねですよね」

大谷選手が花巻東高校1年生の時に作成した「目標達成シート」は、彼の成功への道筋を示す貴重なエピソードとなっている。このシートは、中央に一つの大きな目標を設定し、その周りに9×9のマスを配して、合計81の目標を書き込んだ形式をとっていて、このような手法は大きな目標に向かって一歩ずつ進むための具体的な行動を明確にするという意味で非常に効果的だと注目されている。

大谷翔平を褒めない理由

日本ハム時代の恩師である栗山氏は、今の大谷選手の姿を想像できていたのだろうか。

ハイタッチをする栗山英樹と大谷翔平
2023年3月9日 WBC1次ラウンド 日本×中国 8回1死満塁 山田哲人のレフトへのタイムリーヒットでホームに生還した大谷翔平(右)を出迎える栗山英樹監督(写真:東京スポーツ/アフロ)

「現実的な想像、感覚かどうかちょっと分からないですけど、僕が一番、(大谷選手の能力の)天井を高く見ていたのは間違いない気がします。どれだけ翔平が頑張っても、『こんなの普通でしょ』って思っている自分がいます。もっとすげーんだよ、大谷翔平は、と。

二刀流に挑戦することに対しても、僕は一切不安に思ったことがないです。もっとできる。もっとすごいからってそう思います。本当に翔平のことは信じているので、僕は今回のWBCでも、翔平なら絶対やってくれるという、そこの信頼は一切揺るぎませんでした。

だから褒めないのかもしれない。もっとすごいと思っているから。こんなので褒めたら失礼だよなと」

大谷選手はWBCの全7試合に3番打者として先発出場し、打率4割3分5厘1本塁打8打点を記録。投手としても計3試合で9イニング3分の2を2失点。2勝1セーブで防御率1.86と圧倒的な成績で大会MVPに輝いた。

「(日本ハムに入団した当時から)投打2つともできる能力は間違いなくあった。今でいうと、佐々木朗希と村上宗隆が一緒になっているような感じですよ。普通、村上に「バッターやめますか」って言わないじゃないですか。佐々木朗希に「ピッチャーやめますか」って言わない。

そういう感じ。いやいや、誰が言うんですか。神さま以外に言えないですけどっていう感覚です。2つともやめさせられない」

自分の可能性を心から信じてくれた栗山氏のような人間が近くにいた環境こそが、大谷選手にとって最も大きな幸運の1つだっただろう。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事