人間ドック、医師が教える「ほぼ無意味な検査」2つ 多くの人は「通常の健康診断」で十分な場合も

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代表的なものは腫瘍マーカー検査とPET検査です。腫瘍マーカー検査は血液検査を行い、数値が高ければがんの可能性を考えるというものです。PET検査は「陽電子放射断層撮影装置(Positron Emission Tomography)」という機械を使い、全身にがんが存在しないか確認する、という検査です。

ただ、腫瘍マーカー、PET検査はがんの早期発見に役立つというエビデンスはなく、現場ではがんがより疑わしい人に使われたり、治療の経過を確認するために使われる検査です。なので結局数値が少し高く出ても精密検査をするべきかは患者さんとの相談となってしまうことが多いですし、がん以外でも糖尿病や喫煙などの理由で数値が高く出てしまい、異常値として表記されていることもあります。

もちろん早期発見に役立つのであればよいのですが、確かなエビデンスはなく、がん以外の理由でも上昇する腫瘍マーカーや、本来の使用用途とは異なるPET検査については、最終的には個人の価値観によるものの、医療者としては大きくすすめられるような根拠はありません。

有効性が議論されているPSA検査

有効性が議論されている検査にPSA検査があります。前立腺がんを見つける血液検査で、たんぱく質の一種であるPSA値が高ければ前立腺がんが疑われます。PSA検査が実施されてから前立腺がんの発見数は格段に上がりました。にもかかわらず、厚生労働省の評価は「推奨しない」、日本泌尿器科学会は「絶対に行うべき」と意見が二分されています。

現時点ではPSA検査についてはさまざまなエビデンスが出ているのですが、なぜ発見数が増えているのに明確な有効性が示されていないのか。この背景については、前立腺がんは進行が非常に遅いがんであることが大きなポイントです。前立腺がんは早期発見した場合でも検査をしながら様子を見る「PSA監視療法」がとられることがある、珍しいがんです。

無症状のまま体の中に潜伏していることも多々あり、検査をしていない場合は、自分ががんだと知らない間に寿命を迎えることもよくあります。要は、前立腺がんは「がんの存在を知らなくてもよかった」ケースすら存在するわけです。

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