伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変

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これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ。

しかし、新宮氏は「従来のビジネスモデルとサービス範囲で持続的に成長していくことは難しい。伊藤忠グループの海外ネットワーク、ビジネスノウハウ、経営資源をこれまで以上に活用した事業投資、ビジネスモデルの変革、事業領域、提供機能の大幅な拡充が必要」と危機感をあらわにする。

修正を迫られる伊藤忠の「群戦略」

今後、CTC自体も海外展開を積極化し、コンサルやデータ分析機能を強化して素早く顧客ニーズに応えていく必要がある。「CTCにお金を突っ込んで、今の状況よりさらに企業価値を上げていかなければ乗り遅れてしまう」(鉢村氏)。「緩やかな群戦略」は、修正を迫られている。

CTCと並び、伊藤忠のIT企業群の中核となるコールセンター最大手「ベルシステム24」へのテコ入れも必須だろう。最下流のBPO(業務委託)の分野でカギとなる企業で、伊藤忠は40%超を出資している。

コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。

今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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