伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変

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だが、CTCの企業価値最大化のために伊藤忠から資金や人材を投入しても、出資比率が現状の6割程度では利益が少数株主に外部流出していく。

「こうした外部流出を考えると意思決定のスピードが遅くなる」(情報・金融カンパニープレジデントの新宮達史氏)という課題を抱えていた。完全子会社化で、迅速な意思決定が可能になり、思い切った経営資源の投入が可能になるというわけだ。

CTCを取り巻く競争環境の変化もTOBを後押しした大きな要因と言える。

CTCの歴史は1958年、伊藤忠などが設立した東京電子計算サービスにさかのぼる。当時ではまだ珍しかったコンピュータの輸入販売、計算機センターの運営事業を始めた。その後、事業再編を続けながら電子機器の販売、保守点検を収益柱に成長し、1999年に東証一部に上場(当時は伊藤忠テクノサイエンス)。初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた。

クラウド化が進むにつれ強力なライバル登場

当時の佐武広夫社長は、日刊工業新聞のインタビューに、「一部上場による知名度の向上で人材確保の幅が広がる。日本はこれから本格的なウェブ活用時代に突入するので、これに対応する商品の先行開発が必要だ」と語っていた。

インターネット時代をリードし、伊藤忠グループのIT部門の中核として機能し続けたCTCだったが、クラウド化が進むにつれ、最新機器を販売する「プロダクトアウト」の発想から、顧客が求めるサービスを提供する「マーケットイン」への転換を迫られている。

IT業界では、川上の戦略コンサルから川下のシステム運用や業務受託まで請け負うアクセンチュアなど強力なライバルが現れ、「CTCが気づいた時にはもう案件を取られているケースが多発している」(伊藤忠の情報・通信部門幹部)。しかも、アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。

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