結果を予測できるでしょうか? 学生は、他の学生と比べて自分はネガティブな出来事を頻繁に経験していると考えていました。例えば、60%の学生が過去2週間に悪い成績評価を受けていましたが、そのような経験をする学生は44%にすぎない、と考えていました。
一方、学生は他の学生が自分よりもポジティブな出来事を頻繁に経験している、と考えていることもわかりました。例えば、過去2週間に楽しいパーティーに参加したと答えた学生は41%でしたが、このような経験をした学生が62%もいる、と考えていました。
悲しいことですが、このような知覚の相違は、たとえその内容が間違っていたとしても、ネガティブな結果を生みます。他の学生がネガティブな出来事を経験する頻度を過小評価し、ポジティブな出来事を経験する頻度を過大評価した学生は、孤独を感じ、人生への満足感が低下するのです。
「自らの失敗体験の共有を奨励」する理由
現在、多くの大学が、自らの失敗体験の共有を奨励することで、そうした誤解がもたらすネガティブな影響に立ち向かおうとしています。例えば、マサチューセッツ州ノーサンプトンにあるスミス大学では「レーリングウェル(Railing Well)」というプログラムを開始しました。
このプログラムでは、学生や教授は、個人や仕事上の失敗の経験を共有することで、誰もが直面するネガティブな出来事への気づきを生み出そうとする試みを行っています。同様のプログラムは、スタンフォード大学の「レジリエンス・プロジェクト」、ハーバード大学の「成功・失敗プロジェクト」、ペンシルバニア大学の「ペン・フェイセズ(Penn Faces)」など、他大学でも採用されています。
プリンストン大学のヨハネス・ハウホーファー教授(心理学、公共政策)は、自身の学問的なキャリアでの不合格体験をまとめた「失敗の履歴書」を作成しています。このリストには、不合格になった大学院、不採用になった学問的なポジション、支給されなかった奨学金などが含まれています。
この文書を作成した動機は、人の成功は可視化されるけれども、失敗はそうならないことのほうが多い、という問題意識からだそうです。ハウホーファー教授は「私の挑戦のほとんどは失敗に終わるのですが、成功は可視化されて、失敗はそうならないことが多いです。私は、このことが時に、ほとんどの物事が私のためにうまくいく、という印象を他人に与えている、ということに気づきました。
この失敗の履歴書は、記録のバランスをとることで、何らかの視点を与えようとする試みなのです」とコメントしています。
私自身の仕事上の失敗の履歴書をここに作成してみました。なお、この中には、私の研究論文の掲載を拒否した学術誌編集者や書籍出版社に関する長いリストは含まれていません。
私が進学できなかった博士課程の大学
● 1991年 イェール大学心理学部
● 1991年 ミシガン大学心理学部
● 1991年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校心理学部
私が教員としてのポストを得られなかった大学
● 1996年 ラトガース大学心理学部
● 1996年 ジョージア州立大学心理学部
● 1996年 スタンフォード大学心理学部
● 1996年 ミズーリ大学コロンビア校心理学部
● 1997年 ミネソタ大学心理学部
人が他人に見せるものは、その人が体験していることの本当の姿を伝えていない場合がほとんどです。それを心にとめておくことで、私たちはもっと大きな幸せを見つけることができます。作家のアン・ラモットは「自分の内面と他人の外面を比べないようにしましょう」と述べています。
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