子どもの元気が出ない原因は親のこんな言動? 否定的な気持ちや感情は伝わってしまうもの

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Aさんの場合、結果的によかったとふり返ることができるケースです。しかし、もしAさんの訴えの後も両親の対応が変わらなかったらどうなっていたか。または、もっと早い段階で、両親がAさんのつらさに寄り添えていたならば、Aさんが傷つくことを回避でき、より早く元気をためることができた、と考えられます。

(画像:不登校新聞編集部)

今も耳に残る ドアを閉める音

子どもが元気にならない、または元気を奪うのは親の言葉だけではありません。不登校の子どもの父親であり、不登校の親の会やフリースクールに関わるなど、長きにわたり、不登校の子どもと親の支援に携わってきた野村俊幸さんは、自身の失敗談を語ってくれています。

野村さんの長女がある講演会で話した「父親がバタンとドアを閉める音がつらくて、今も耳に残っている」というエピソードに野村さんはショックを受けたと言います。「長女の不登校を受けとめておらず、腹を立てて不満を抱いていたからこそ、無意識ながら自分の感情をぶつけるようにドアを強く閉めていた」と、ふり返ります。

野村さんは、社会福祉臨床家・バイステックが提唱した7つの原則の1つである「援助者は自分の感情を自覚して吟味する」ことの重要性について身をもって実感したと語ります。そのうえで、野村さんは「相手に対する否定的な気持ちや感情はかならず伝わる」と指摘します。

子どもが不登校をしているときには、言葉だけでなく、自分に向けられたまなざしや態度にも敏感になっている時期があります。私がこれまで取材してきた不登校経験者からは「台所でため息をつく親を見て、もうしわけない気持ちになった」、「親が2階に上がってくる足音で機嫌がわかる」といった話も聞かれました。

ちょっとした親の言動ひとつで、すこしずつたまってきた子どもの元気が急にしぼんでしまうことがあります。親として「プラスになることをする」だけでなく「マイナスになることをしない」ということに気を配ることも、子どもが安心感を得ていくことにつながります。

(編集局・小熊広宣)

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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