「年収800万円」の俳優がスト参加する深刻事情 ハリウッドでストをしている彼女の言い分

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スキャン映像をもとに、ビジュアル・エフェクトなどの加工をする作業は映画界ではすでに日常的に行われており、群衆の頭数を増やすために、群衆の映像をコピーしたり加工するのも、すでに標準的な作業だ。

こうした中、ムラシュコさんは1本の作品限定用にスキャンされたはずの自分の顔や身体の映像が、別の映画でも今後使用される可能性があるのかどうか、また、その著作権、所有権、使用権は誰にあるのか、心配している。

ムラシュコさんいわく、「最近では、泣いたり笑ったり、さまざまな感情を表現してその顔をスキャンされれば300ドルの報酬がもらえる、という単発の仕事まで業界内で出回っている」。

全米映画俳優労働組合を代表するダンカン・クラブツリー・アイルランド氏は、「スタジオ側は、スキャン映像とAIを使って、バックグラウンド俳優の許可なく、その映像を永久使用したい意向だ」と主張している。

これに対し、映画会社、テレビ局、アマゾンやネットフリックスなどが所属する業界団体「AMPTP」は「俳優本人の許可を取らず、使用料金の支払いをせずに、スキャン映像を勝手に使うことはない」と反論しており、両者の言い分は真っ向から対立している。

契約書をすべて読むのはほぼ無理

俳優組合に所属する16万人のうち、ムラシュコさんが演じるような群衆役を過去1年間で1度でも経験した俳優は3万人強はいる、と言われている。

ハリウッドの生態系の底辺で働く彼らにとって、個別の映画の撮影契約書は、当日、呼ばれた現場に行かなければ交わせないケースが多く、その場で与えられた契約書の細かい文字を短い時間ですべて読むのは難しい。その上、署名を拒絶すれば、その仕事にありつけないため「NO」が言いにくいという事情もある。

だからこそ、組合を通した労使契約で、AIの使用がどう定められるか、適切な報酬が支払われるのかーーは、今後の職の存在そのものを左右することになる。

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