MLBがユニホーム広告契約を解禁も苦戦する事情 ヤンキースのファンから否定的な反応が多数

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スター保険のロゴがついたヤンキースのユニホーム(写真:AP/アフロ)

現地12日、ヤンキースは2018年からチームスポンサーとなっているスター保険との契約を拡大し、21日からニューヨークを拠点とする同社が2031年までチーム初のユニホームパッチパートナーとなると発表した。これによりユニホームの袖口に同社のロゴが付くことになる。

MLBは各チームの収益拡大のため、2023年シーズンからこのユニホーム広告を許可することを発表した。これを受け、ヤンキースは昨年チームが出資するレジェンズ社に広告の販売を委託していた経緯がある。

レジェンズはヤンキースとプロアメリカンフットボールNFLのダラス・カウボーイズが2008年に設立、その後投資会社シックス・ストリートも加わり、スタジアム内の売店運営や小売りマーチャンダイズ、スポンサーシップなどの事業を展開している。ロサンゼルスのSoFiスタジアムやラスベガスのアレジアント・スタジアム、ノートルダム大学などをクライアントに持つ。

広告が入ることにファンから拒絶反応

今回の契約だが、関係者によると契約額は年間約2500万ドルにのぼる模様だ。これは年500万ドルから1700万ドルとされる他のMLBユニホーム契約を大きく上回るものだ。ヤンキースの知名度を考えれば納得できよう。

一方で、それだけにこの広告枠を獲得するのも世界的に知られたプレミアムブランドになるだろうと予想されていた。6つの大陸で事業を展開する世界的な保険・投資会社であるものの比較的無名なスターをレジェンズとヤンキースが選んだことは意外と捉えられている。その点に対し、ゼネラル・パートナーであるハル・スタインブレナーはスター保険を「適切な会社」だとコメントしている。

対して、ファンの反応は否定的なものが多い。広告が入ることに対して拒絶反応が出ているのである。ヤンキースは背番号を設けた最初のMLBチームだが、「選手の存在がチームを超えることはない」というポリシーからいまだにユニホームに選手の名前を入れていない。本拠地ヤンキー・スタジアムの命名権も販売されていないのである。ユニホームに関しても右胸にサプライヤーのナイキのロゴがつけられているだけだった。このような反応が出るのも致し方ないかもしれない。

さらにMLBのユニホーム広告による収益増加という思惑も狙い通りには進んでいない。当初フランチャイズあたり平均1330万ドル。全体で年間3億5000万ドルから4億ドルを生み出すとされていた。しかしこれまで契約を結んだMLBチームは12にとどまっている。アメリカ経済の停滞が背景にあるようだ。

シーズン後半、ヤンキースの選手達の新しい姿への印象をぜひ確かめてみて欲しい。

(渡辺史敏)

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