それほどまでに両社の良識を蝕んだのは、2019年4月に導入した板金部門の「完全査定レス」の仕組みが瓦解することへの恐れが強かったからだろう。損保ジャパンの損害査定人による修理見積りの査定を省略し、ほぼノーチェックで保険金が支払われるその仕組みは、ビッグモーターにとっても、損保ジャパンにとっても増収につながるものでまさにウィンウインだった。
それを自分たちの手で壊すという選択肢は、さまざまな組織的圧力の中で雲散霧消してしまった。
白川社長はどこまで把握していたのか
気がかりなのは、入庫誘導の再開に至る一連の経緯を損保ジャパンの白川儀一社長や、当時の営業担当役員はどこまで把握していたのか、ということだ。
今となってはすべての事情を認識しているはずだが、「昨夏当時は知らなかった」とシラを切り、“とかげの尻尾切り”をするのであれば、晩節を汚すどころでは済まないはずだ。
昨夏、東京都内で開かれたある会合で、東京海上日動火災保険の広瀬伸一社長と三井住友海上火災保険の舩曵真一郎社長、白川社長の3人は偶然顔を合わせ、会談している。この段階ですでに、ビッグモーターによる水増し請求の疑いは濃厚になっていた。
取引額上位3社のトップによる顔合わせとあって、話題は自然と水増し請求問題になり、一丸となって毅然と対応していくことを「3人で確認している」(大手損保役員)という。
ところが、その後、損保ジャパンの白川社長は手のひらを返し、入庫誘導の再開にゴーサインを出した。そのあまりに軽率な判断は非難されてしかるべきだろう。
現在、国土交通省や金融庁まで実態解明に動き出しているが、その行政処分を待つことなく、損保ジャパンには経営責任の明確化が突きつけられている。
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