ところが、大手損保の幹部によると、A氏の証言自体は「工場長の指示で日常的に過剰な自動車の修理を行ったうえで、保険会社に対して過剰な修理費を請求している」という趣旨のものだったという。
A氏の証言を取ったのは、損保ジャパンの出向者だ。この出向者は「指示があった」という証言について「板金部門の当時の部長や損保ジャパン側にも伝えている」(大手損保幹部)。
証言と真逆の内容になったのはなぜか
しかしながら、最終的にA氏に署名を求めたヒアリングシートの内容は「指示はなかった」という真逆の内容になっていたという。
内容を変えたのは、ビッグモーターの板金部長なのか、はたまたヒアリングをした出向者自身なのか、その真相はまだ藪の中だ。
それでも、A氏に対して証言と全く異なる内容の文書に「署名を求め、サインさせているのは事実だ」と大手損保の幹部は話す。
本当にA氏は自らの証言と異なる内容の文書に署名をしたのか、あるいは署名をもらった後に証言部分を書き換えたのではないか、などさまざまな疑念が湧くものの、複数の関係者の話を総合すると上記のような事実が浮かび上がってくる。
いずれにしても、ビッグモーターと損保ジャパンは組織的ともいえる不正の事実を認識しながら、その事実を隠したことの責任は免れようがない。
不正を過失として事実を捻じ曲げ、金融庁にも虚偽の報告をした上で、損保ジャパンは自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の獲得増のために、入庫誘導の再開に向かっていったわけだ。
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