ソニーFG新社長・遠藤氏「再上場で甘え断ち切る」 元金融庁長官に問われる保険・銀行経営の手腕

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そもそもは1979年にプルデンシャルとの合弁で生命保険会社を立ち上げたところから始まった金融グループだ。金融事業はソニー創業者の盛田昭夫さんの夢だったと言われていて、(合弁会社で副社長を務めた)プルデンシャルの坂口陽史さんと盛田さんは神様みたいな存在といえる。

今も金融グループの中心にソニー生命がある。ライフプランナー(営業員)の中には自主的に住宅ローンや損保の研究をしている人もいる。だからといって、ソニー生命のライフプランナーにいろんな商品やサービスを集中して売ってもらうというのでは、戦略としてダメだと思う。

シナジーを生み出していくためには、まずは損保や銀行がそれぞれもう少し深掘りをしてもっと大きくならなければならない。そうすることで初めてソニー生命と平等になってシナジーを生み出せるようになるはずだ。

──具体的にはどういう拡大が考えられますか。

例えば自動車保険は、これから電動化や自動運転技術が進んでいくことで、業界全体のパイが縮小するかもしれないという課題がある。そこに対してわれわれもチャレンジしていきたい。ソニーがホンダと組んでEV(電気自動車)の「アフィーラ」を作っているのだから、将来を見据えた新しい商品にも挑戦できるはずだ。

銀行が手がけている外貨預金や住宅ローンでも同じことが言える。メガバンクでは住宅ローンをやめようかというところまで出てきているわけで、未来永劫住宅ローンが銀行の収益の柱なんてことはありえない。ウェブ3.0など新しい技術が出てきている中で、デジタルバンクのようなことにも挑戦していきたい。

ソニーの金融3社の利益水準

 

そうしたことをやっていくために、少し時間はかかるかもしれないが、銀行のシステムをクラウド中心のものにしていく必要がある。約20年前の設立当時から同じシステムを使ってきたが、機動的に機能が追加できるようにもしていきたい。

──6月から社長へと立場が変わったことで、自身に変化は?

その企業の課題はいったい何なのかを認識することが重要であるという点はアドバイザーのときと同じ。ただ、アドバイザーには認識した課題に取り組む責任がない一方で、経営者にはその責任がある。そこが違う。

──金融庁長官時代には、変額保険などを使ったいわゆる節税保険について「美しくない」と発言するなど、厳しい態度を取ってきました。ソニー生命では現在も変額保険の販売を継続していますよね。

1年ほど前、ソニー生命の取締役会にオブザーバーとして出ているときに、節税保険が議題に上がった。そこでもそうとう厳しく「本当にやっていないんですか?」と尋ねた。実態も見せてほしいと言って、実際にロールプレーの動画も見せてもらった。

中小企業オーナーなどのお客さんに求められたからといって、節税保険を勧めるのは顧客本位ではない。企業の経営課題に対して客観的な立場からアドバイスしたり、自分のネットワークから適切な人を紹介したりするのがライフプランナーとしての顧客本位だ。

私としては1年間社内の議論をみてきて、「重層的な議論をきちんとやっている組織だな」という印象を持っている。

グループとの連携は人間関係が要

──ソニーグループとの連携では、金融とそれ以外の部門の連携が希薄な印象がありました。

ソニーグループの6事業の中で、金融だけはほかのグループとちょっと離れたところがある。関係が薄くなっているというのはそうだろう。

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