AIによる画像生成は「著作権侵害」にあたるのか 知らないと危ない「生成AI」の使い方とその論点

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ケースバイケースであるものの、文書生成の場合は、プロンプトは単なるアイデアの場合が多く、出力された生成物についての創作的寄与が認められにくい傾向にあると思われます。

画像生成の場合も、単純な一回的な文章のプロンプトであれば、生成物に対する創作的寄与は認められにくいと思われます。もっとも、プロンプトについて、何度も入力し直したり、複数画像からの選択を繰り返すなどのさまざまな試行錯誤をして生成物を完成させた場合には、創作的寄与が認められる場合があると思われますが、どのレベルの試行錯誤があればこれが認められるのかははっきりしません。

AI生成物に人間が手を入れて直接修正すれば、手を入れた部分のみについては、人間に著作権が発生します。

生成AIの利用規約に注意

『ChatGPTの法律』(中央経済グループパブリッシング)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

以上のとおり、AIが作ったコンテンツについては、著作権が発生しないため、生成AIで作ったことを隠して、人間が作ったことにしてしまうという問題があります。これを直接著作権法違反の刑事罰で取り締まることは、現在の条文では困難であるとされています。もっとも、生成AIとの利用規約において、AI生成物についてAI生成物であると表示することが義務づけられている場合があり、この規約に違反することになります。

その他にも生成AIとの利用規約との関係では、著作権が自分に帰属する定めになっているか、そうであるとして、他人への行使が制限されていないかを確認する必要があります。誰でも自由に使える/他の登録ユーザは自由に使えるといったルールになっている可能性があります。

また、生成AIで生成されたコンテンツについて商用利用などの制限がないかも確認して、当該制限に抵触しない範囲で使うことも必要です。

田中 浩之 弁護士・ニューヨーク州弁護士(森・濱田松本法律事務所)

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Hiroyuki Tanaka

2004年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2006年慶應義塾大学大学院法務研究科修了、2007年弁護士登録、2013年ニューヨーク大学ロースクール修了、2013年Clayton Utz法律事務所で執務(〜2014年8月)、2014年ニューヨーク州弁護士登録。2023年4月~慶應義塾大学大学院 法学研究科 特任教授(非常勤)兼慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートサイバーフィジカル・サステナビリティ・センター構成員。個人情報、IT、知的財産を3本柱とする。著作は「ChatGPTの法律(共著)」「60分でわかる!改正個人情報保護法 超入門」(共著)など。

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