回答のポイントは2つある。1つめは、デパートにおけるサービス業と異なり、医師は顧客である患者が自覚している要望のみならず、無自覚な側面にも目を向けなければならないという点である。病とはそういうもので、無自覚な部位に病巣が巣食っている場合がある。
2つめは、医師は自身が提供する医療サービスについて、裁量の範囲が広いということである。その結果、医師は患者の権利に鈍感になりがちであり、また、社会的地位を背景に、患者から猛烈な批判を受けることもない。おおむね、こんな回答ができるだろう。
俳句を詠ませる面接、その狙いは
学術的な面接、さらに専門的な知識を問う面接がある一方で、思わず苦笑してしまう面接試験もある。昭和大学医学部に特待生合格した教え子が、面接試験に臨んだ時のことである。やりとりを復元してみよう。
面接官:「君は、国語が得意なようだね」
教え子:「ええ、まあ、それほどでもないですが」
面接官:「じやあ、ここで、今の気分を一句詠んでみてくれる?」
(5秒間沈黙)
面接官:「????????」
教え子:「面接で いい点とって 合格だ」
面接官:「よく言えたね(笑)」
不思議かもしれないが、これは真実の話であり、こんななごやかな面接もある。ちなみに沈黙の5秒間は、「マジか……」という驚きで2秒間、俳句を考えるので3秒間だったのだそうだ。
一見、意図の不明確な問いに思えるが、背景には、頭の回転の速さや機転の利かせ方を見たいという、試験官の明確な目的があるものだ。これは冒頭で紹介した、面接での回答に「デパートのお客さんとは……」と突っ込んだ試験官も同じことが言えるだろう。
企業の新卒採用面接であれば、このような突拍子もない問いが飛んでくることがしばしばあるだろう。そんな問いに高校生が直面するのは酷に思われるかもしれないが、これが医学部入試の現実である。
とはいえ、この生徒の頭の回転の速さなら、合格には十分である。ただ少々のミスもあった。彼曰く、「季語が欠落していることに気がついたのは部屋を出てからだった」。
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