日清食品HD、営業が「生成AI集中特訓」で得た実感 質問のテンプレ作成し、400時間の業務削減も?

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日清食品HDが対話型AIを導入した発端は4月3日。入社式でのことだった。安藤宏基社長CEOはChatGPTを用いてメッセージを生成し「今後はテクノロジーを賢く駆使していくことで、短期間に多くの学びを得てほしい」とメッセージを投げかけた。

利用画面にログインする度、ひよこちゃんが利用上の注意喚起をする(画像:日清食品HD提供)

入社式は新入社員だけでなく、当然、役員もそろっている。

情報システム領域を担当する成田敏博CIO(グループ情報責任者)はトップの言葉を受けて早速動き出した。「早いタイミングで社内に導入し、何ができるのか、従業員が肌で感じられる環境を作る必要がある」。

動き出してから1カ月も経たない4月25日、早くも社内公開にこぎつけた。

社内導入において徹底したのが、リスク対策だ。ChatGPTでは社内情報を扱うこともあるので、セキュリティ対策として専用のクラウド環境を構築。システム面の整備に加えて、社員への教育も徹底して行った。利用ガイドラインを策定し、説明会も開催。

利用画面でも、ログイン時には同社キャラクターのひよこちゃんが登場し「回答をうのみにせず、正しい情報なのか必ず確認しよう」などとランダムに注意喚起するようにした。

ユニークなのは、初回ログイン時に安藤社長直々のメッセージが表示されるようにしたこと。注意事項とともに「自分自身や組織の更なる成長を加速するために(中略)上手に活用してください」と呼びかけるのだ。社員は「承知しました」と確認してボタンを押さなければ次に進めない。

「ChatGPTに限らず、本質的にはインターネットでの情報収集等にも言えること。リテラシーを持つことが重要な対策だと位置づけている」と成田CIOは語る。

400時間分の業務削減に期待

社内公開以降、とくに集中して取り組んできたのが営業分野での活用促進だ。5月下旬から6月中旬までの6週間、以下のステップでプロジェクトを進めた。

①生成AIの活用に向いている業務の洗い出し、②プロンプト入力の研修、③最適なプロンプトのテンプレート作成、④対象業務をどれくらい短縮できたかの効果算出、成果報告の4つだ。コンサルティングを担当するギブリー社には、随時ビデオチャットなどで質問ができるようにした。

さながら、生成AIの特訓だ。

こうして7月上旬時点では、商談内容の要約や資料の構成案の作成、マーケット情報の報告書の作成、エンタメ企画の検討、テーマ性のある売り場提案、プレゼンのスクリプト作成など、16個の標準テンプレートができあがった。

30個のテンプレートを仕事に活用すると、営業担当者1人当たり年間400時間の業務時間削減が期待できる。アウトプットの質の向上で顧客満足度を底上げし、社員の心理的負担を軽減する効果も期待している。

7月以降はマーケティング部門、ホールディングスの管理部門にも横展開していく。

成田CIOは「最初は皆使うが、毎日使っているユーザーは1割弱ほど。具体的に何の業務に使えるかを理解しなければ利用は広がらない。時間はかかるが、営業部門のような取り組みを各部門に広げていきたい」と意気込みを語る。

生成AIを「導入して終わり」では意味がない。その先、担当者や部署ごとにどんな活用の余地があるのか、そして何ができないのか。実務でのメリットを徹底して追求し続けることこそ、社内で根付かせるポイントになりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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