今では400万円台も、80年代の名車ヤマハRZV500R レーサーレプリカ・ブームを代表する1台に迫る

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RZV500Rのエンジン
RZV500Rのエンジンまわり(筆者撮影)

通常は、こうした違う方式を1つのエンジンに採用することはほぼない。RZV500Rの場合は、キャブレターとエアクリーナーのスペースを確保するための方策だといわれている。とくにエンジンに取り込む空気を濾過するエアクリーナーは、レーシングマシンには不用だが、市販車では必須の装備だ。RZV500Rのエンジンは、レーシングマシンと同様の排気量やレイアウトにこだわりながらも、市販車として公道走行するための装備を追加するために、さまざまな工夫がなされていたといえる。

RZV500Rの排気システム
RZV500Rの排気システム(筆者撮影)

排気システムでは、車体左右に2本、シートカウル下に2本という、計4本のチャンバーを装備する。チャンバーとは、4ストローク車でいうエキゾーストパイプのようなもの。中央部に膨らんだ形状の膨張室を持たせることで、排気効率などを向上させる2ストローク車特有の排気システムだ。RZV500Rでは、かなり極太のチャンバーを採用し、リヤビューにワークスマシンさながらの迫力あるフォルムを生み出している。

足まわりでは、フロントサスペンションに、アンチノーズダイブ機構を採用。急激なブレーキング時などに、サスペンションが沈み込みすぎて車体が前のめりになってしまうことを防ぐためのシステムだ。これも1980年代にWGPなどのレースで培われた技術のひとつで、当時のスポーツバイクではトレンドのひとつだった装備といえる。

また、リアサスペンションには、初期の動きが柔らかく、沈み込んでいく量に応じ硬さを増すなどで、高い運動性能を発揮するリンク式を採用する。RZV500Rの場合、シートカウル下にグラマラスなチャンバーが大きなスペースを占めていたため、サスペンションユニットを配置する場所がないという問題もあった。そこで、エンジン下に水平に配置することで対応。ほかにも、軽量なアルミ製フレームをヤマハ市販車で初採用するなど、各部にレースで培ったテクノロジーや装備も満載されている。

当時の人気と現在の価格

RZV500Rのシートカウル
RZV500Rのシートカウル(筆者撮影)

このように、RZV500Rは、当時としてはかなりハイスペックな装備や、さまざまなヤマハ独自の技術を投入したバイクだった。だが、残念ながら、あまり売れなかったようだ。その要因は、まず、販売価格が82万5000円とかなり高価だったことだ。当時、最もハイスペックで、最高級のバイクだといわれた750cc・4ストロークエンジン車、いわゆる「ナナハン」でも、価格は60万円台後半~70万円台後半が主流。より高いRZV500Rは、ユーザーにはなかなか手が出せない「高嶺の花」だったといえる。

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