「人のつながり」が日本の課題を解決する 藤沢烈と駒崎弘樹、「復興」を語る<3>
駒崎:あとは、企業はとっとと社員を家に帰すこと! 特に男性社員ですね。父親の長時間労働によって、母親の産後うつや夫婦の産後クライシスが引き起こされ、産後離婚でひとり親を生み出すことにもつながります。
場合によっては、ストレスを抱えた母親による虐待を引き起こしたりもする。その意味で「企業が社会問題をつくりだしている」とも言えるわけなんですよ。
だから働き方を変えて、家族から借りている社員を家族に返す。それもいま、とても大事なことだと思っています。
孤立感をもつ人々をどう巻き込むか
藤沢:企業の話からは、ちょっとそれちゃうんですけれど。被災地支援をしてきて、復興に向けてだいぶ前向きに動き始めている方もいれば、2011年から時間が止まったまま、いまだに前を向けないでいる方も多くいらっしゃるのを感じます。その状況をどうするのか、この4年間ずっと考えてきました。
最近注目しているのは「社会関係資本」(ソーシャルキャピタル)のことです。地域において人と人とのつながりがあることが仕事や暮らしの基本になる、という考え方です。
震災が起きた後に人付き合いが減った人と、増えた人がいます。増えた人は「すごく復興が進んだ」と感じやすいのですが、人付き合いが少なくなった人たちは、「復興はぜんぜん進まない」と感じやすいのです。同じ地域であっても。人とのつながりが弱い方は、地域の町並みが震災前に戻るほど「周りは自分を置いてどんどん先に行ってしまう」と感じ、孤独感を強めるのです。
町を元に戻すだけでは不十分なのです。孤立感をもつ方のつながりを強めなければ、本当の意味での復興にならないんです。
私たちの活動では、「人と人とのつながりをいかに生むことができるか」ということに、力点を置いています。かかわってくる企業の皆さんにも、そうした点を理解頂いています。
企業と行政とNPOが垣根を越えて協働する未来
会場:ここ10年でNPOを取り巻く環境はすごく変化したということですが、これから10年後はどうなっているでしょうか? または、どうなっているのがいいのか? 展望や希望などあれば、お聞かせください。
藤沢:予言はできませんが、いま以上に、企業がより社会にかかわるようになります。これは「そうなってほしい」という思いも含みますが。
これまでの社会では、企業が”間接的に”社会にかかわってきたんですね。利益の一部を、NPOに寄付する形で。これからは企業がもっと”直接”、社会の問題を解決する方向に向かっていきます。企業が自分でNPOを保有し、社会課題解決の当事者になる事例も増えると考えています。
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