電気のロールス・ロイスに「らしさ」はあるのか? 初の量産BEV「スペクター」試乗で見た超世界

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「音はドライバーの体験として重要だと考えていました」。デザイン統括のワーミング氏は言う。

「ドライバーがどれだけ加速・減速しているかを体感できるようにするか。そのための音を作ろうと、サウンドエンジニアたちと半年以上にわたって協議しました」

疑似エンジン音ではない、新たなサウンドをクリエイト(写真:Rolls-Royce Motor Cars)

自宅にミキサーまで備えたスタジオを持ち、器楽演奏が趣味だというワーミング氏だけあって、「これぐらい強く踏んだら低音の帯域を強調して、逆にこの速度でアクセルペダルを戻したら中音域で表現して……」と、こだわりを口にする。

エンジン音の再現ではなく、加速と減速のフィーリングを音で表現する。それがロールス・ロイスの手がけたBEVのキャラクターなのだ。もちろん、サイレントモードを選ぶこともできる。

宇宙遊泳している気分に

最後に、大切な“ロールス・ロイスらしさ”の1つであるインテリアについて触れよう。

クラフツマンシップによるビスポーク(特注)を重視し、「2台として同じクルマはない」などと言われてきたロールス・ロイスの特徴は、スペクターでも継承されている。

「シーシェル」と「アイスランドモス(緑の部分)」のシートに「ロイヤルウォールナット」を組み合わせた仕様(写真:Rolls-Royce Motor Cars)

加えて、デジタライゼーションも、広範囲で行われている。特に「スピリット」なるさまざまなデジタル機能と、スマートデバイスのアプリを連動させた「ウィスパーズ」(ささやき)も、ゴーストに続いて採用された。

さらに、スペクターだけのオプションとして用意されたのが「スターライト・ドア」。これまでロールス・ロイスは、2006年のファントム以来、天井に星空を表現した「スターライト・ヘッドライニング」を採用してきた。

スターライト・ヘッドライニングとスターライト・ドア装着仕様。まるで宇宙にいるようだ(写真:Rolls-Royce Motor Cars)

スペクターでは、ドアの内側と後席の内張りに合わせて4796個の“星”を表現した「スターライト・ドア」も選べる。特に夜間、後席(居心地がよい)に座って走っていると、宇宙遊泳している気分になると私は感じた。

ロールス・ロイスは、2030年までにラインナップのすべてを電動化するとうたっている。このあと出てくる電動車は「既存のモデルの電動化でなく、新開発されたモデルになるでしょう」と、ミュラー=エトヴェシュCEOはナパで語った。

“ロールス・ロイスらしさ”がどのように継承され、そして進化していくのか、おおいに楽しみである。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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