クルマによっては(特にICEのスポーツカー)、エンジン回転数が4000rpmを超えると俄然、活発になり別の顔……というか、素晴らしいドライビングプレジャーを味わわせてくれるモデルがある。
スペクターは、もちろんスポーツカーでなく「ラグジュアリー・エレクトリック・スーパークーペ」(ロールスロイスの資料より)と定義されたモデルだから、“ガンガン走らせる”想定ではないだろうと思っていた。
加速性については、先に述べたようにそのとおりで、静かに走り出し、そのままゆっくりアクセルペダルを踏み込んでいくと、徐々に速度が上がっていく。
「徐々に」とはいっても、空飛ぶじゅうたんが目標なだけに静かで(実物に乗ったことないけど)、気がつくとびっくりするような速度に達している。静かな気持ちで直径が大きめのハンドルに手を添えて走っていると、自分がハイスピードで走っているような自覚すら持てない。
ロールス・ロイスのいう「エフォートレス・ドライビング」が、スペクターで見事に実現しているのに、まず感心した。
加速は「巨人の大きな手で押される」ように
一方、アクセルペダルを強めに踏み込むと、その加速は凄まじく速い。そして、電子制御サスペンションシステムは、高速巡航時の乗り心地だけでなく、カーブの連続する道での車両の挙動も実にうまくコントロールする。
曲率のきついカーブであろうと、スペクターはスイスイと曲がっていく。ハンドルを握りしめる必要はなく、むしろ指でつまむような感じで操作するだけで、思いどおりに走ってくれるのだ。
車重が2890kgと3トン近くあるので、ブレーキングのタイミングは少し早めとなるが、ステアリングホイールのコラムから生えている変速機の操作レバーで「B」を選ぶと、回生ブレーキシステムが作動。
アクセルペダルに載せた足の力を弱めると、ブレーキがかかる。いわゆる“ワンペダル走行”で、ワインディングロードを走っていける。
「スペクターの加速性は、巨人の大きな手で後ろからすーっと押されるようなものを目指した」とドクター・アヨウビが言うように、強い加速でも体感的な加速感は控えめだった。ただし、独特の音がアクセルペダルの踏み込み量に応じて奏でられる。
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