本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり

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また「ワシントン・コンセンサス」は、1989年にアメリカの国際経済学者が打ち出した概念だ。

具体的には財政赤字の是正、補助金カットなど政府支出の削減、金利の自由化、貿易の自由化、公営企業の民営化、規制緩和など10項目の政策が掲げられていた。財政均衡や民営化、規制緩和などで小さな政府を目指すとともに、投資や貿易の自由化で市場経済を徹底し、アメリカ流資本主義を世界に広めるという考えだ。

日本にも迫った「市場開放」「規制緩和」を否定

アメリカと言えば市場主義や自由貿易の権化のようなイメージがある。1980年代には、日本に対して市場開放や規制緩和を再三求め、日本政府が対応に苦慮した歴史がある。

ところがバイデン大統領らはかつてアメリカが推し進めた政策を全面的に否定しているのである。

その代わりに打ち出したのが保護主義的な産業政策だ。具体的には「インフラ投資・雇用法」「インフレ抑制法」「チップス投資・科学法」の3つの法律だ。

これらの法律は、アメリカやカナダ、メキシコで最終組み立てをした電気自動車購入への実質的な補助金にあたる税控除、アメリカ国内の半導体産業を強化するための5年間で約7兆円の企業に対する補助金制度、国内雇用を創出するための1.2兆ドルに及ぶインフラ投資などが主な内容だ。

半導体をめぐってはアメリカの政策転換を受けて、すでに国内外の企業が相次いでアメリカ国内の工場建設計画を発表しており、効果は出ているようだ。

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