このように大きく広がる可能性のある深刻な問題なのだが、「お知らせ」は極めてあっさりしたものだった。字数にすると、本文は400字にも満たない。
肝心の中身も、「関係者の皆さまにはご迷惑とご心配をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げます」といった定形表現を除けば、以下の記載にとどまっている。
特別調査委員会からの再発防止策の提言は以下のとおりです。
・鈑金部門における適切な営業目標の設定
・リスクマネジメントを実効的に行うための内部統制体制の整備
・懲戒処分の運用の適正化等
・現場の声を拾い上げるための努力
・従業員教育の強化
「不適切な行為」の内容が具体的にどのようなものだったのか。あるいは再発防止策として、具体的に何をすべきと指摘されたのか。これでは全くわからない。
(編集部による補足:なお、東洋経済オンラインでは、「不適切な行為」の内容や、再発防止策についてビッグモーター側に質問状を送付しています。返答があり次第こちらに追記します)
そして目を引いたのは、箇条書きの最初にある「鈑金」の文字だ。自動車業界「以外」で、この言葉を知っている人がどれほどいるだろうか。古い自動車修理工場の名称などでは使われているそうだが、一般的には「板金」と記されているものだ。「鈑」の字は、使用頻度が高い常識的な漢字として国が制定した「常用漢字」にも含まれていない。
「普通の会社」の広報であれば、仮に社内で「鈑金」の文字が使われていたとしても対外的にはわかりやすさを重視して「板金部門」と記すか、「修理部門」などと表現を変えるだろう。
責任者の処分に対する言及も、問い合わせ先もない
この「お知らせ」が異様なのは、これだけではない。責任者の処分に対する言及も一切、ないのだ。これだけ悪質な不祥事であれば、社長や担当役員の辞任、あるいは減俸などの処分があって然るべきではないか。
処分内容だけではなく、問い合わせ先に関する記載もまったくないのだ。「自分もビッグモーターで修理をしたことがあるが、不正請求されていないのか」。不安を抱いている顧客が問い合わせる窓口すら、記載がないのだ。
この「お知らせ」の掲載場所も、実にそっけないものだ。トップページで大々的にうたっている「6年連続買取台数日本一」のずっと下部の「インフォメーション」の欄に「ビッグモーター神栖店 2023年7月8日(土)オープン『オープンチラシ公開中!』」という告知と一緒に並んでいるだけなのだ。
同じサイト内で「お知らせ」よりもはるかに大きく掲げられた「ビッグモーターが提案する安心の自動車保険」というバナーが、虚しく見えてしまう。
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