ビッグモーター、不正の認定で「黙殺戦略」に綻び 超薄い謝罪文ににじむ、モラルなき企業の実像

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実に空疎な「お知らせ」なのだが、ビッグモーターとしては「出しただけマシ」とも言える。というのも、ビッグモーターはどのような不祥事や疑惑を指摘されても、反応してこなかったからだ。

昨年は「展示車とみられる車両がナンバープレートを付けずに公道を走る写真」「無料見積もりを依頼したら、勝手にドラムブレーキを分解されて、追加料金まで請求された」といった投稿が炎上した。

今年に入っても「車検で必要な検査の一部を実施せず不正合格させたとして、九州運輸局が熊本浜線店の民間車検場の指定を取り消した」ことを朝日新聞、熊本放送、熊本日日新聞などが記事にしている。

さらに5月5日号の『FRIDAY』は「客のタイヤにネジを突き立てパンクさせて、工賃を請求」「高級タイヤに取り替えたとウソをついて安価なタイヤを使い、その差額を利益に」「車検を行っていたのは無資格のスタッフ」など、にわかに信じられないほどの内容を報じている。

まさに、不祥事や疑惑のオンパレードなのだが、ビッグモーターは謝罪会見どころか、どのメディアの取材にも応じず、コメントも発表していない。徹底して「完全黙殺」を貫いてきたのだ。

「完全黙殺」の数少ない例外が、昨年9月5日の「一部報道に関する、問い合わせ窓口開設のご案内」と、今年1月30日の「特別調査委員会設置のお知らせ」だ。

前者の「問い合わせ窓口開設のご案内」も、実に不親切なものだった。この「ご案内」は以下の書き出しで始まる。

先般のマスコミ報道により、お客様、お取引先様をはじめ関係する皆さまに多⼤なるご不安・ご⼼配をお掛けしますことを⼼よりお詫び申し上げます。

そして「ご案内」を最後まで読み進めても、「一部報道」がどのようなものであったのか、一切「案内」されることはない。「一部報道」を目にしていない顧客にとっては、「何のことかさっぱりわからない」代物なのだ。

後者の「特別調査委員会設置のお知らせ」にしても、最小限の情報開示しか行っていない。特別調査委員会のメンバーとして、委員長の名前しか明らかにしていない。委員長以外はどのような人選を行ったのか、全くわからないのだ。

ビッグモーターの異様なる「完全黙殺」の広報戦略

さて、ビッグモーターが「完全沈黙」を破った今回の「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」、昨年9月の「一部報道に関する、問い合わせ窓口開設のご案内」、今年1月の「特別調査委員会設置のお知らせ」には、ある共通点がある。いずれも保険金の不正請求に直結する事案なのだ。

なぜ保険金不正請求「だけ」は、最低限ながらも「完全黙殺」を破ったのか。東洋経済によると、このような経緯だったという。

調査委や取引のある大手損保からは報告書の公表を強く求められていたにもかかわらず、受領後も「1カ月近くにわたって延々と渋り、公表の有無を自ら決めようとしなかった」(調査委の関係者)という。
次ページ「完全黙殺」が機能してきた理由は、3つに集約できる
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