「失われた20年」の終わり 武者陵司著
「失われた○年」はまだまだ続くという悲観論は間違いで、日本経済はこれから好循環期に入る--。元気の出る結論である。すなわち不振の元凶だった円高はまもなく終わり、20年間苦吟し続けた日本経済は今や筋肉質となって復活の条件を整えている。長期デフレの最大の原因となったアメリカの日本たたきもすでに必要性が失われ、今後は米中摩擦の高まりから日米同盟が再強化される結果、日本に地政学的ボーナスがもたらされるという。
経済学的に矛盾する現象が続いたこの20年が終わり、日本の高物価体質は解消して、日本産業の優位性が発揮される。そして日本本来の潜在力が発揮される時代が到来するという推論は、楽観的すぎるきらいがなきにしもあらずだが、論拠は明快かつ一貫している。地政学と経済学を組み合わせた展開はユニークで、悲観論者の反論が待たれる。大震災後、著者は論旨を何ら変えていないことも付言しておきたい。(純)
東洋経済新報社 1680円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら