茨城発のカフェ「サザコーヒー」が東京でウケる訳 地元食材をメニューに反映、コーヒーの質に磨き

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サザコーヒー
東京農大店で提供する「ケニア」(Mサイズ520円、税込み)と「コロッケぱん」(500円、同)。ポーランド製・セラミカのカップも人気だ(写真:サザコーヒーホールディングス)

5月10日、東京都世田谷区にある東京農業大学キャンパス内にカフェの「サザコーヒー 東京農大店」がオープンした。店は一般客も入れるため、週末には数時間、行列が途切れない日もあるという。

サザコーヒーの本店は茨城県ひたちなか市で、開業は1969(昭和44)年。鈴木誉志男氏(現会長)と美知子氏(前社長)夫妻が映画館だった勝田宝塚劇場(1989年閉業)内に開いた。半世紀以上かけて地道に店舗数を拡大し、現在は17店を展開している。そんな地方発のカフェがなぜ、東京の大学に出店することができたのだろうか。

オープン日は学生や一般客で長い行列ができた(写真:サザコーヒーホールディングス)

倒れないために攻める

現在、社長を務めるのは3代目の鈴木太郎氏。長年、茨城県から出なかった出店戦略を変え、2005年の「エキュート品川店」(JR品川駅構内)で東京進出を果たした。以来、都内は5店舗目だ。コロナ禍で外食環境が厳しかった時期も積極攻勢を行い、昨年3月にはJR新橋駅改札口にも出店した。なぜ、サザコーヒーは攻め続けるのか?

「『自転車は漕がないと倒れる!』という気持ちでいます。コロナ禍で、さまざまな飲食店が弱って退店も相次ぎ、駅ビルや商業施設のテナントが減ってしまいました。当社の活動を通じて、コロナの間に落ち込んだ分を取り戻したい思いでいます」(太郎社長)

それまで運営する全店が黒字経営だった同社も、2020年4月、コロナ禍の最初の緊急事態宣言により商業施設内の店舗が営業休止。世の中の外出自粛で大打撃を受け、大幅な赤字状況に陥った。だが同年春が底で、その後は回復。もともと強かったコーヒー豆のオンライン販売なども業績を支え、2020年度は黒字を確保した。

2021年も実質黒字(新工場竣工で生産部門は赤字)となり、同年、中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者」にも選定された。最近の業績はどうか。

「2022年の売り上げは前年比120%と好調でしたが、利益面では設備投資を多く行ったことで減らす結果となりました。今年1月以降は前年比115%と順調に伸びています」(同)

コロナの分類が変更され、生活モードが通常に戻ったのも追い風となりそうだ。

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